YOKAI (妖怪) in New York 第23話 ネズミ妖怪に乗っ取られた地下鉄

YOKAI (妖怪) in New York
第23話 ネズミ妖怪に乗っ取られた地下鉄

 サブウェイ・ゴーストと言うとすぐ思い浮かぶのは映画『ゴーストバスターズ』に登場する妖怪と、同じく映画『ゴースト/ニューヨークの幻』(写真右下)に出現する妖怪だ。
 前者は地下にあるゴースト貯蔵庫が破壊された後、地下鉄出口から飛び出してきた大量発生のゴーストの1匹である。
ゴーストニューヨークの幻 (120x170)
 後者は主人公である銀行員(サム)の幽霊に物体を動かすことを教える地下鉄に巣食う妖怪だ。温厚誠実なサムは恋人であるモリーとのデートの中、暴漢に襲われ亡くなってしまう。死んだ後もサムはモリーが心配で天国へ行くにも行けずゴースト(幽霊)となってさまよい彼女を守ろうとする。自分を殺した男が彼女に迫るのでサムは阻止しようとするが、幽霊故、透明で空気のような存在のためその男に触ることもできない。そんな彼に地下鉄のゴーストは物体の動かし方を教える。写真立を倒したり、猫のフロイドをけしかけさせたりして彼女のピンチを救う。
 この映画は「アメリカ映画史上100選」にもなり知らない人はまずいない。こんなことを思い出しながらニューヨークの地下鉄に乗っていると、新聞紙が床に転がっていても近くにサブウエイ・ゴーストがいるのじゃないかと思ってしまう。この様なことは「謎のラップ現象」とニューヨークでは言われているようだ。本当に地下鉄の窓が突然割れたり、風もないのに空き缶が飛んだりするそうだ。

 ニューヨークの地下鉄内ではこの5年間で3000件を越える性犯罪が申告されている。平均すると1年で600件だ。だがたまに出くわす今の地下鉄警察官を見てもその緊張感は感じられない。表情も穏やかだ。それもそのはず、1980年代にはニューヨーク市内では1年に2000件もの殺人事件が起きていたのだから、殺人事件ではない性犯罪なんてへでもないのだろう。ニューヨーク市内と地下鉄内で犯罪件数を比べるのは平等な視点ではないが、データがないのでご勘弁いただきたい。それにしてもとにかく80年代には地下鉄の犯罪数も非常に多かったといわれる。一人で乗るな、夜遅く乗るな、できれば乗るなは常識だった。

地下鉄博物館にある少し前の地下鉄車両
 ニューヨークの地下鉄犯罪が減ったのは当時のジュリアーニ市長の功績とたたえられているが、一番の功労者は地下鉄警察トップのウィリアム・ブラットであったと言われる。
写真左:地下鉄博物館に展示されている現在より少し前の地下鉄

 だがそれ以外に日本人デザイナーの宇田川信学の治安改善への功績も大きいらしい。宇田川はニューヨークの地下鉄車両にいくつかの変更を試みた。ドア横のステンレスの仕切棒を斜めにし、シートは固いけれどモダンで壊れにくい素材に、床は汚れが目立ちにくい天然ゴムの素材を使って黒っぽい色にした。外壁はペンキを塗られてもすぐに洗えるステンレスを取り入れた。

ニューヨーク地下鉄
 この効果もすごかったらしい。落書きだらけの地下鉄車両が常に新品に見えるようになったし、ひったくりの窃盗も大幅に数を減らしたというのだ。こうなると暗く汚い所を好む妖怪の居場所はなくなってしまうが。
写真右:新しく変更された現在の地下鉄車両 ドア横の斜め仕切棒(地下鉄を降りる間際にドア横の座席の人から持ち物をひったくるのを防いだ)、モダンで壊れにくい素材を使ったシート、汚れが目立ちにくい天然ゴムの床、ステンレス製の車両などが特徴

乗客の足に登るネズミ
 さてニューヨークの地下鉄だが2014年12月28日にびっくり?ニュースが日本の新聞にも載った。なんとニューヨークの地下鉄構内を無数のネズミが走り廻ったという。車両内にも入り込んだため、乗客が悲鳴を上げたらしい。
写真上:地下鉄車内で乗客の足に登るネズミ
ニューヨーク都市圏交通公社によると地下鉄内にネズミが少なくとも840万匹はいるという。

地下鉄構内の木製の柱
 僕が泊まったホテルのあるハーレム近くの地下鉄構内では、上り下りの列車の境目にある大きな柱が木製であるのに気付いて驚いた覚えがある。
写真右:地下鉄構内の木製の柱
当然すべてコンクリート製と思っていたからだ。そのことから考えると構内に少しはネズミがいるだろうとは思ったが840万匹は多すぎる。これに対し公社は不妊薬剤をまく計画だとか。毒餌をまけば一発で殺せると思うがそうではなく、不妊薬剤を使っての駆逐する方針らしい。動物愛護の観点からの駆除なのだろうか。
 
 我が妖怪屋敷も数年前、近所の倉庫が壊されマンションに建て替えたため大量のネズミが引っ越して来た。天井裏で運動会が始まった。どうも妖怪屋敷はネズミにとって居心地がいいらしい。数が多すぎることを知った僕は、ネズミ取り器具では手ぬるいと直接毒餌を天井裏にまいた。1週間後僕の寝室は死臭に占領され1年間ぐらい部屋が使えなくなった。ニューヨークで毒餌をまいたらどうなるか。まあこう考えると不妊剤駆除もありかと思える。

死の舞踏ヴォルゲムート1493
 ところが恐ろしいことに、新聞によると先日ニューヨークの地下鉄内でペスト菌が微量ながら発見されたという。ペストとネズミの関係はヨーロッパで幾度も人類を絶滅の危機にさらしているから衆人の知るところだ。
写真左:ヨーロッパのペストの恐怖を描いた版画

北里柴三郎
日本の北里柴三郎(写真右)はこのペスト菌の発見者でもある。中世のヨーロッパ人にとってペストを運ぶネズミは恐怖の存在であったであろう。地下鉄がきれいになってサブウエイ・ゴーストが住みにくくなったため、新たな妖怪的存在のネズミが繁殖したのだろうか。

旧鼠

 水木妖怪の中にもネズミ男という妖怪がいる。また江戸時代には旧鼠(写真左)と言われる高齢のネズミ妖怪が登場する。この妖怪はなんと猫を食べるが、子猫を育てることもあるという変わった妖怪だ。


 先日また、おもしろいニューヨークの地下鉄のニュースが新聞に載った。2匹の子猫が地下鉄の路線に迷い込んだという。そのために交通局は一部の路線を90分間も停めて猫の救出作戦を企てたということだ。ネズミ妖怪を撲滅したい交通局だが、旧鼠のような面もあるわけだ。いずれにしろ人間の犯罪撲滅の後はネズミ妖怪の撲滅にニューヨーク地下鉄は忙しい。映画『猿の惑星』では地球が猿に乗っ取られていたが、ニューヨーク地下鉄はネズミ妖怪に乗っ取られているようだ。


<ニューヨークの妖怪シリーズ>

 さて今回も上記の話に因んだ僕のオリジナル妖怪画を紹介したい。ニューヨークの地下鉄内には少なくとも840万匹のネズミがいると言われる。今やニューヨークの地下はネズミが支配している。

㉓ 『サブウェイマウスゴースト』

サブウェイゴースト

 かつてのサブウェイゴーストに変わって、今ではネズミが地下鉄に君臨し、地下鉄車両内外を問わず走り回っている。今回の妖怪はビッグアップル(ニューヨーク)の上に立ち、リンゴを食い荒らし、地下鉄を支配する妖怪だ。

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プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

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