YOKAI(妖怪) in New York 第17話 コロンビア大学の妖怪フクロウ

YOKAI(妖怪) in New York
第17話 コロンビア大学の妖怪フクロウ

コロンビア大学正面

 マンハッタンを北上しブロードウエイ116丁目の所にコロンビア大学がある。1754年に設置され、ノーベル賞受賞者を数多く輩出している世界屈指の名門大学である。現大統領オバマ氏もここの出身だ。
写真右:コロンビア大学の正面



図書館前のアルマ・マータ像
 この大学のパルテノン神殿をおもわせる図書館の正面に、月桂冠をいただき両手をあげたアルマ・マータ(ラテン語で智をはぐくむ母、母校の意味)像がある。
写真左:図書館の正面にあるアルマ・マータ像
ギリシャ神話でいうアテナがモデルだ。アテナは戦の女神でもあり、よく英雄たちに作戦の指示を与えている。トロイヤ戦争でもギリシャ側に就いて指示を出していた。第2次大戦中、ヒトラーに対抗してマンハッタン計画をここで練り、アインシュタイン等により造られた原子爆弾はルーズベルトの命によってドイツに使用せず広島、長崎に投下することになった。作戦としてのトロイの木馬の精神がこのニューヨークでは原子爆弾の製造につながったのか。また広島に原爆を落としたエノラゲイの名は機長の母親からとった名前だという。機長にとって母親はアテナのようなものだったのだろうか。余談だが、つい前年の2014年8月5日、エノラゲイに搭乗していた最後の搭乗員が亡くなった。

女神像の襞に隠れているフクロウ
 この女神像の足元のスカートの襞の中に、フクロウが彫り込まれている。
写真右:アルマ・マータ像の衣のなかから覗くフクロウ
ほとんど誰も気づかないが、もし最初にフクロウを見つけた新入生がいると、彼がその学年の卒業生総代、 つまり最優等生になるといわれている。妖怪が自分を見つけてくれたお礼に首席にするのだろうか。
 この彫刻を作った作家のダニエル・チェンチはどういうつもりでほとんどわからないところにフクロウを入れ込んだのだろうか。フクロウは女神アテナのお供だが、それを言いたいなら堂々とわかるように彫るべきでないか。だがフクロウには悪い印象もある。「夜の妖怪」とか「墓を暴き人肉を食べる妖怪」「男の精を操る」「子供をさらう鬼女」といったものだ。この彫刻の作者はこういった負のイメージを避けるため、しっかり探さなければ存在が分からないように彫り込んだのか、それともコロンビア大学に巣食う妖怪が彼に創らせたのか。

アインシュタインとシラード
 そうなると1939年、アインシュタインにルーズベルト大統領へ核開発を促す有名な書簡(アインシュタイン=シラードの手紙)を送ることを依頼したレオ・シラードもこの妖怪によってここへ連れてこられたのか。
写真左:アインシュタインとシラード

 コロンビア大学関連の最近の話題としては、ここの在校生が2006年にヴァンパイア・ウィークエンドというバンドを結成し2009年11月には日本へ単独公演でやってきている。吸血鬼というグループ名も妖怪っぽい。

Kill Your Darlings  また2013年に映画化された「キル・ユア・ダーリン」(Kill Your Darlings)は1944年に実際にこの大学内で起きた「デヴィッド・カマラー殺人事件」をストーリーにしている。
写真右:「キル・ユア・ダーリン」のポスター
 主人公はアメリカのビートジェネレーション(1914~1929生まれの世代)を代表する詩人アレン・ギンズバーグ(1926~97)だ。彼はコロンビア大学に入学するが学内の保守的な考えに反発し、新しい詩の形式を提唱したり、酒やドラッグ等、既成概念を破壊する行動を起こす。これはその後に開花するビートジェネレーション運動のもとになるものだ。原題はダーリンが複数になっており、いろいろ大切なものを殺せ、捨て去れということで、伝統的なものを否定したビートジェネレーション運動と通じるものがある。勿論殺人事件が絡んでいるから本来の殺すという意味も含まれている。

デヴィッド・カマラー事件の犯人ルシアン・カー
 映画ではまだ若い学生のアレンが魔性の美青年ルシアン・カーに魅せられ、学内での同性愛が絡んだ殺人事件に巻き込まれていく。このあたりの話題になると少女マンガとホモセクシュアリティが専門研究分野で本も出版した妻が詳しい。僕はホモには興味がないが。とにかく保守的伝統を重んじる大学とまだまだ保守的であった当時の社会において、これはアメリカ人にとっても、コロンビア大学の名誉に取っても大事件であったのだ。
写真左:デヴィッド・カマラー事件を伝える新聞 写真は殺人を犯したルシアン・カー

写真右下:妻(山田田鶴子)が修士論文として書き、後に出版した『少女マンガにおけるホモセクシュアリティ』ワイズ出版

少女マンガにおけるホモセクシュアリティ
 第2次世界大戦で勝者となったアメリカは戦争肯定の考え方が正当化され、繁栄の裏で虚偽と不安に満ちた社会になっていく。だがこの事件やビートジェネレーション運動を契機としてこれまでの表面的な文化からの離脱、真の人間社会の関係を求める動きをアメリカは模索し始め、それはカウンターカルチャー、さらにベトナム反戦運動のヒッピームーブメントと受け継がれていく。
 コロンビア大学の学生達を見守り育んできたアルマ・マータの衣の脇からこそっと覗くフクロウ妖怪はどんな気持ちでいるのだろうか。よい出来事も悪い出来事もこのフクロウが操って歴史を動かしてきたのかもしれない。僕をここへ導いたのもそんな所に理由があったかもしれない。

 ところで先先回のブログにも書いたが、昨今は学問の府といえどもセキュリティが厳しいが、僕のような外国人のおっさんが簡単に入れたのは、学生らしい青年に大学の入り口を尋ねたことによる。彼は気軽に、僕について来いと言い、ついでにアルマ・マータ像のことも聞いたら親切に案内してくれた。これもアルマ・マータのお慈悲か、それともフクロウの誘惑なのか、いずれにしろ親切な青年に感謝だ。


<ニューヨークの妖怪シリーズ>

 さて今回も上記の話に因んだ僕のオリジナル妖怪画を紹介したい。今回はコロンビア大学内の女神像に潜んでいるフクロウの妖怪だ。

⑰ 「コロンビア大学の妖怪フクロウ」

コロンビア大学の妖怪フクロウ


 この妖怪フクロウは女神のスカートの襞の中に分からないように潜んでいる。誰も見ていない暗い夜などに活動をしているようだ。アメリカ国旗のパンツをはき、かぎ爪と6つに別れた尾羽で骸骨を加えこんでいる。

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プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

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