YOKAI(妖怪) in New York 第16話 妖怪ヘミングウエイの猫

YOKAI(妖怪) in New York 
第16話 妖怪ヘミングウエイの猫

レキシントン586
 ニューヨーク滞在中、次回出版予定の妖怪本に載せる写真を撮るため、レキシントン通り586にある、例のモンローのスカートが舞い上がるシーンが撮影された地下鉄換気口の所へ行った。
写真右:レキシントン586の地下鉄換気口前
 その後信号や人の流れを見ながら気の向くままマンハッタンを南下していった。今回の旅は妖怪探究が目的だから彼等からなんらかのメッセージがあるかもしれないなどと思いながら。

インターコンチネンタルホテル
 ふと気付くと豪華なインターコンチネンタルホテル(写真左)の前にいた。このホテルはこれまでたくさんの著名人が泊まったことで有名だが、僕には『老人と海』を書いたヘミングウエイの常宿としてのイメージが強い。ヘミングウエイといえば猫だ。

 色々な動物の中で猫は魔性があるといわれ一番妖怪に近い生き物のような気がする。タヌキや狐が化けるのより、化け猫の方が怖い感じがするし、尾や指が多かったりするともう妖怪だそうだ。妖怪ウオッチに登場する尾が2本あるジバニャンはその例だ。鎌倉時代から10年生きた猫は尾が二つに分かれた猫又妖怪になるといわれているし、エジプトでは人間より猫のミイラの数の方が多い。猫は死んだからと言って抹殺できない何かがあるわけだ。とすると無類の猫好きで40匹以上を飼っていたヘミングウエイにも妖怪の気が乗り移っていたかもしれない。

 僕としては偶然立ち止まったホテル前だが、ひょっとして妖怪に呼び寄せられたのだろうか?以前取り上げたジョン・レノンのダコタハウスも偶然、建物前にある手すりの彫刻が目に入って、僕にジョン・レノンがここで殺されたことを暗示させてくれた。今回もモンローとヘミングウエイはどこかで繋がっている、と気づかせようとしているようだ。僕はこのシリーズの第10話ではモンローを6本指の妖怪としてとりあげてもいる。

 ヘミングウエイはここニューヨークヤンキースのファンらしく『老人と海』の中でも取り上げている。「やっぱりヤンキースが1番だ」と老人、「でも今日は負けたよ」と少年は言う。「何でもないさ、大ディマジオはすぐに調子を取りもどすよ」と老人は答える。そのヤンキースのディマジオはご存知のように誰もが知るホームラン王でモンローの夫でもあった。ここでモンローとヘミングウエイは繋がる。

6本指の猫
 いや、今気付いたがまだある。ヘミングウエイの愛した猫に指が6本あるものが多かった。
写真右:ヘミングウエイ宅の6本指の猫
前足6本、後足4本の計20本だ。これをアメリカでは幸福を呼ぶ「ヘミングウエイの猫」というそうだ。モンローも6本指、ヘミングウエイの猫も6本指、みんな妖怪に近いと思っていいわけだ。

 「やはり妖怪には妖怪が分かるのだ。だからモンローは次に僕をヘミングウエイに会わせようとしたのか」と僕は勝手に判断しつつここを通り過ぎた。僕は2014年12月のニューヨーク滞在中、ほとんど地下鉄に乗らなかった。街を歩かなければ妖怪からの伝言が届かないと思ったためだ。

museumofsex
 さてその後1時間ほどぶらぶら歩いた後、僕は若者がたむろしているマジソンスクエアパークの北20~30mにある「セックス博物館」と書かれた建物(写真左:museumofsex)の前に来ていた。ニューヨークの真ん中にある秘宝館らしき建物で、入るのも僕にはちょっとはばかられた。恥ずかしながら僕はここで、日本のストリップ劇場に似た性の実演か、或はそれに近い巨大な映像が見られると思った。たとえ予想が外れても、ポップアートのウェッセルマンのマリリンモンロー的裸婦像かアレン・ジョーンズの彫刻以上の性描写を期待した。

写真下左:ウェッセルマン作 グレイト・アメリカン・ヌード
写真下右:アレン・ジョーンズ作 帽子掛け、いす、テーブル

ウェッセルマン作グレイトアメリカンヌード  アレン・ジョーンズ作帽子掛け、椅子、テーブル
2000円近く払って入場したがこれがひどかった。日本の秘宝館の方がはるかにすごく、我が家の妖怪屋敷にあるきわどい本や置物の方がよほど性的におもしろいと思った。

踊る男根人形 この博物館の最初の部屋は、娼婦屋敷のように赤暗くしてあった。淫靡な雰囲気があり実演でも始まるのではと期待したが、20cmほどの男性の形をした彫刻が勃起したペニスを振りかざして小さな箱の中で踊っているつまらないものだった。(写真右)
これで博物館といえるのかと僕にはここのオーナーが信じられなかった。ニューヨークには性を嫌う妖怪でもいるのかと思ったくらいだ。そういえばここマンハッタンで性をあおる看板やポルノ雑誌等をほとんど見なかった。離婚率100パーセントをはるかに越えるニューヨークでこれは驚きであった。パリへ行こうがベルリンやロンドン、コペンハーゲンに行こうが、一般の人々が通る街角でポルノ的な本や情景に出くわさなかったことはない。なのに世界第1の都市で1番開放的な印象の強いニューヨークにその雰囲気がない。この街のホイットニー美術館等の方がよほど過激であった。

 ヘミングウエイに頭を占領されていた僕としてはこのセックス博物館にある種の期待をしていた。それというのもヘミングウエイはマッチョで性に強い男のイメージがある。彼は次々女を変えたがその都度真剣だったのだ。僕は彼が自殺したのは真剣な性=生の勝負に負けたからではないかと推測する。彼のハバナにある屋敷のバスルームは10畳ぐらいあるが、入るとこれ見よがしに大きなビデがでんと構えている。彼が現役だった頃は、このビデも多いに活用されたことだろう。酒とたばこが大好きだったヘミングウエイは、それがためか晩年は性不能になってしまった。男が現役でなくなることは生きる意欲を失わせ、芸術、文学の創作意欲すら奪ってしまう。きっとビデを見るたび彼は自己嫌悪に陥ったのではなかろうか。そしてそれが自殺につながったのではないかと思う。彼が自殺した年齢の62歳に僕がなった折、この自宅を訪ね、僕はそう直感した。

ホイットニー美術館内の作品
 性は奥深いものだが、博物館の展示として見せるとなると難しい点も多く、いかがわしくもつまらないものになってしまいがちだ。過激すぎれば猥褻罪で取り締まりを受ける。僕はニューヨークでは性は芸術領域でしか取り上げられないと思った。ホイットニー美術館の美術作品群は過激な性を扱いながら、それを観念的な思想にまで昇華させたところに芸術的な価値があるし、美術館の雰囲気もそれをバックアップしている。

写真上:性作品がいっぱいのホイットニー美術館

<ニューヨークの妖怪シリーズ>

 さて今回も上記の話に因んだ僕のオリジナル妖怪画を紹介したい。今回は文豪ヘミングウエイも妖怪の仲間入りをしてもらった。多くの猫とともに暮らしていた彼は妖怪駕かっていたのでは?という推測からだ。特に多くの猫が6本指の異形の猫ということも妖怪めいている。

⑯ 『妖怪ヘミングウエイの猫』

妖怪ヘミングウエイの猫
 米国で「ヘミングウエイの猫」というと幸せを運ぶ猫といわれている。ヘミングウエイの飼っていた猫には6本指の猫が多かった。今回は6本指で二股の尾を持つ猫がヘミングウエイの頭に乗って彼に乗り移ろうとしている。前足には酒の缶をつかんでヘミングウエイにすすめ、彼岸へと誘っているようだ。ヘミングウエイの顎の下には骸骨が見える。
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プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

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