YOKAI (妖怪) in New York 第10話 一番の妖怪は妻だった

YOKAI (妖怪) in New York
第10話 一番の妖怪は妻だった


死体が発見されたハドソン川埠頭
 少し前の話だが、中日新聞の朝刊(2014.8.30)に「日本人がピストルで撃たれハドソン川に浮かぶ」というニュースが小さく掲載されていた。アメリカではよくある事件であろうが、日本人に関することだから日本の新聞でも取り上げたのだろう。ニューヨーク市警によると、男性はオノウエ・ヨシアキさん(54歳)で8月21日の7時ごろ、マンハッタン南のハドソン川に面する埠頭(写真右上)で遺体となって浮いているのが見つかったという。頭部を幾発も撃ち抜かれ即死状態であったとか。

 折しも僕は「ニューヨークの妖怪」を書いている最中なので、だだの殺人ではなく何か怪しいと思い、すぐにニューヨークの知人に細かい情報を教えてくれるようメールを入れた。その知人というのは僕と同年代の金持日系人で数年前に再婚している。相手の女性とは付き合いが結構長かったので、その間彼女から早く籍を入れて正式な夫婦になりたいとせがまれていた。男性側は別に正式に結婚する必要も感じなかったのだが、歳もとってくるし、まあ結婚しようかと思って籍を入れたようだ。ところが籍を入れてしまったら、彼女が「私があなたより先に死ぬとあなたの身の回りの世話をする人が無くなるので心配だわ。私より1日でも早く死んでね。」と毎日のように言うとか。いやー、怖いね。要するに早く死ねということだ。若い女との結婚は大変だ。

ヘミングウエイ
 『老人と海』を書いたヘミングウエイも最後の若い妻には手を焼いていた。高価な毛皮のコートを買えというので、買い与えると、次にはダイヤモンドのネックレスという具合に次々と要求を突きつけると、日記に愚痴を書いている。ヘミングウエイの62歳での自殺の原因も少しはそんなことが影響しているのかもしれない。彼のようにマッチョで金持ちの有名人でもそうなのだから、きっと弱い一般の男性には奥さんの風当たりは強いだろう。
写真左上:60歳を過ぎたヘミングウェイ

 僕の知人のことはさておき、冒頭の殺人事件に話を戻すと、やはり単純な殺人ではなく近親間の怨念がらみらしいという。米国の日本総領事館によると、亡くなったオノウエさんは日本の草野球の名手で10年以上前に日本からやってきてクインズ地区で暮らしていた。妻とは7年前に離婚して日本人の経営する飲食店で午前6時から昼過ぎまで弁当を作る仕事をしていたとか。市警の発表によると彼の死体が発見される前、ニューヨークの街中の防犯カメラに一人で歩く彼の姿が捉えられていたという。それに職場にも、もう数日やってきていなかったという。
2000賞金の手配写真 この頭を撃ち抜くという方法からしてもただの物取りではなく、なにか深い事件性があると感じた市警は報奨金2000ドルをかけ、被害者の写真付きで情報提供(写真右)を求めている。普通はこんな方法を使わないらしいのだ。彼を殺しても奪う所持金がさしてたくさんあるとも思えないのに、わざわざ頭を撃ったのは、何か即死させる必要があったのではないか。犯人は誰なのか。別れた奥さんか今の彼女か、身近の者が保険をかけておいて殺したのか。
 市警もやはりこの事件に関しては身内の犯行と睨んでいるようだ。身内説だと内部の協力が得られないため、賞金で外部の目撃情報に頼ったわけだが、しかし市警はその後なんの発表もしていないと僕の知人はいう。

 この折に彼がこれも僕のニューヨークの妖怪話に使えるのではないかと、最近ニューヨークの新聞を賑わした別の事件を教えてくれた。
 それによると今年、2014年8月29日、保険金目当てで夫の殺人依頼をした58歳の妻が逮捕されたという。妻は失業中の夫を殺してくれるように、おとり捜査の警察官とは知らずに依頼をした。殺しの報酬は宝石類や6万ドルの評価格を持つ希少切手だとか。発覚したのは、妻が同じブルックリンに住む同郷のルーマニア人に夫殺しを相談し、その男が怖くなり警察へ相談に行ったかららしい。その通報でおとり捜査官が保険金殺人請負人を装って彼女に接触したというわけだ。

ブルックリンの街並み この妻に殺されかけた失業男、失業前は相当派手な暮らしぶりだったらしい。それがゼロになったから突然、妻は夫殺しを思いついたようだ。妻はおとりの警察官に「夫を日曜日の昼食に連れ出す、その帰宅途中の横断歩道で、私が夫を押すのであなたの車で引いてほしい」と依頼したという。新聞が色々面白く書いたのは彼女の住む同じマンションにはニューヨーク市警察の長官が住んでいるという事実があったためだともいう。
写真左上:ブルックリンの街並

 これらの事件、連日「早く死んでね」と言われている僕の知人にとっても他人事ではないのだろう。特に初老の再婚男性は気を付けなければいけない。一番怖いのはすぐ身近にいる妻なのだ。俺はまだまだ現役だと若い女性と再婚したまではいいが、妻となった女の目的は夫への愛ではなく、彼の財産であることが往々にしてある。現役を周りにも誇示したいことで頭がいっぱいの男にはそれが見えない。「自業自得じゃないの」という恐ろしい女の声がさらに追い打ちをかける。

 ここニューヨークは全米の殺人者数に比べてその数は決して多くはない。今年(2014)の8月までで全米では14612人の殺人数に対しニューヨーク市では414件で、驚くことにマンハッタンやクインズでは0人だという。多いのはブルックリンでそれも身内の犯行が大半であるとか。前回のYOKAI (妖怪) in New York第9話で、僕は飽くなき金銭欲の亡者と化した妖怪人間がマンハッタンのウォール街を浮遊跋扈していると書いたが、21世紀には彼らの住処が証券取引所からブルックリンの一般家庭に広がってきているようだ。

二口女
 話は飛ぶが、日本では5月5日の子供の日に菖蒲風呂に入る習慣がある。そのいわれは、江戸時代の妖怪話に出てくる。妻に化けていた妖怪が夫を殺そうとしたので、夫は菖蒲の生えた池に逃げ込んだ。妖怪妻はその強い香りが苦手で追うのをやめ逃げ出したという。だから子供たちを妖怪から守るため菖蒲風呂につける習慣ができたとか。菖蒲は邪気を払うものと考えられている。また菖蒲は葉の形が剣に似ているので中国や朝鮮でも悪魔祓いの武器として使われている。日本では鎌倉時代に菖蒲の葉で兜や刀を作り合戦の真似をする行事があったという。
 この妖怪は『二口女』(ふたくちおんな)(写真右上)と言って後頭部にもう一つの口を持っている。そして髪を触手のように使い、後頭部の口から食べ物にむしゃぶりつく。二つの口は女の強欲さを象徴している。きっとこの話を作り上げたのは男で、女は強欲だ、特に妻には気を付けよという教訓を周囲に発するための妖怪話に違いない。
いやー、女、特に妻は古今東西恐ろしいものなのだなあ。日本のみならずニューヨークにも二口女は存在していたのだ。今度ニューヨークに出かける時は知人の男性に菖蒲の葉っぱを持参しよう。



<ニューヨークの妖怪シリーズ>

 さて今回も上記の話に因んだ僕のオリジナル妖怪画を紹介したい。今回はニューヨークに限らす世界共通に妻は恐ろしいということで、日本に古くから存在している二口女のニューヨークバージョン『妖怪 ニューヨーク版二口女』これを紹介したい。

⑫ 『妖怪 ニューヨーク版二口女』

妖怪ニューヨーク版二口女

 日本の江戸時代に登場した二口女妖怪をアメリカ風に変えてみた。髪が触手となって伸び、心にはどくろが住んでいる。あなたの周りにもいるかもしれませんよ。
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

カウンター(since2011.1.1)
プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR