YOKAI (妖怪) in New York    第1話 YOKAI 9.11(1Q84)

YOKAI (妖怪) in New York
第1話 YOKAI 9.11(1Q84)

 マンハッタンを対岸に見るブルックリンに妖怪好き仲間4人と来ている。一人の女性が「ニューヨークへ来てから突然電気がついたり、電話が鳴ったりとおかしなことばかり起こっているのよ」と愚痴る。するともう一人の女性が「妖怪はそのような電波関係にコンタクトを取るのよ。すごいじゃない。あなた、ニューヨークの妖怪に好かれているのよ」と茶々を入れている。「うちの奥さんはもう亡くなっている親がふっと見えたとかよく言うんだ。ここに来てたらどんな反応をしたかな」ともう一人の男性が言う。彼の奥さんは11月11日生まれで、この4人の中で霊的現象に一番詳しい女性によれば、この日に生まれた人はあの世とのコンタクトが取れやすい体質だとか。9.11とか3.11とか11日には何かあるようだ。

ブルックリンから見たマンハッタン 川を挟んで目の前に、これぞマンハッタンといえる摩天楼のビル群が林立しているのが見える。写真右:ブルックリンからマンハッタンを望んで
 僕は以前もニューヨークへ来てブルックリンからマンハッタンを見ているが僕の記憶にある景色と今日の景色は明らかに違う。世界貿易センターの二つのビルがないのは、歯が抜けたような、何か大きな穴が開いたような喪失感を覚える。

 「このあたりを20年近く前、村上春樹が毎日のようにジョギングしていたのよ!」と村上春樹ファンでもある先の妖怪好きの女性が感動しながらみんなに伝える。村上春樹は1991年プリンストン大学の客員研究員として渡米している。日本に帰国したのは1995年だから、彼が見慣れていたマンハッタン風景は9.11以前のツインタワーのある景色だ。9.11以後にツインタワーのないマンハッタンを見た村上春樹はきっと僕と同じ喪失感を感じたに違いない。9.11自体が非常にショッキングな事件であるということは言うまでもないが、数年間そこに滞在し見慣れていた風景が突然消えるというのはとても不思議な異次元の世界を見ているようなショックに違いない。

ツインタワー とするとそのショックが、その後書かれた『1Q84』に書かれていてもおかしくない。いや間違いなくどこかで取り上げている。ひょっとすると『1Q84』に出てきた「2つの月が空に浮かび、リトル・ピープルが出現する世界、そこに入り口はあっても出口はない・・」と書かれた幻の2つの月が出る空間は、旅客機の激突で消えた二つのビルからの連想ではなかろうか。写真左:消える前のツインタワー

 こう考え出すと今暫くここにとどまって、村上春樹がここで何を毎日見て、何を考えていたのか知りたいという思いが強くなってきた。僕は何故か人の心に入り込み、その思考を読むのに幼い頃から長けていた。だから事前学習のいらない、じゃんけんや五目並べは結構勝つことが多かった。

 この日は平日で午前中でもあるためかコーヒーショップ等はどこも開いていなかった。日本ならば午前10時くらいなら開いていて当然だが不思議だ。ただ一軒、何故かトマトスープ屋だけが店を開いていた。誰もいない路上に出された丸椅子に座り、きっと村上春樹も同じことをやったのではないかと思いつつ、僕らは甘辛いスープをコーヒーのようにすすった。

ブルックリン橋 すぐ前には刈り込まれた木々の間に建つブルックリン橋の太い石の橋脚(写真右)が見える。これに似た橋を以前どこかで見た気がする。そうだロンドンのテムズ川にかかるマーロウブリッジのあの太い石造りの橋脚に似ているのでは。いや待てよ『1Q84』に登場し、どうしてもイメージが湧かなかった冒頭に出てくる首都高速道路の非常階段、主人公の青豆が交通渋滞に引っ掛かり、ここで降りて使う階段、日本では意味不明の非常階段が、目前の橋脚がモデルなら理解できると思った。

 マンハッタンに入る車の渋滞が出来、人々がここで降り、橋桁の中にある階段を抜け地下鉄か、歩いて橋を渡り、ツインタワーのあるロウアーマンハッタンに向かうことも多かったのではないか。その行き方で行けばマンハッタンはリトル・ピープルの支配する世界になったりして。そう思うと『1Q84』の世界がよく理解できそうな気がしてきたから面白い。

 『1Q84』のBOOK1をめくるとその見返しにジャズでおなじみの『ペーパームーン』の歌詞が載せられている。“イッツ オンリー ア ペーパームーン・・・”(紙の月でも私を信じてくれたら真実になる。あなたの愛がなければ全てが偽物・・)。この歌詞を入れた動機は紙の月と2つの月、そして今は消えてしまった2つのビル。全ては幻のような世界を描きたかったからではないだろうか。

エイリアンの看板のあるコーヒーショップ ということは夢幻の世界、異界を彼に着想させた何かがここにはある。近くには僕が生まれて一度も出会ったことのないエイリアンの看板があるコーヒーショップらしき店もある。写真左:エイリアンの看板のコーヒーショップ店の前。何故こんな店があるのか。ここにUFOでも出現したことがあるのだろうか。
飲んだらどんな味がするのだろうか。ここはニューヨークにある妖怪スポットの一つにしてもおかしくない気がしてきた。


<ニューヨークの妖怪シリーズ>
 今までのブログでも僕のオリジナルの妖怪(平成名古屋の百鬼夜行から)を紹介していたが、これからはYOKAI in New Yorkのタイトルに因んでニューヨークの妖怪をそれぞれのブログの内容に合わせて紹介していきたい。もちろん全て僕が創り出した妖怪である。

① YOKAI 9.11(1Q84) No.1

YOKAI 9,11 No1   


①長い耳がツインタワーになったウサギ、頭に二つのビルを乗せアメリカ風の骸骨スタイルにして描いてみた。















② YOKAI 9.11(1Q84) No.2

YOKAI 9,11 No2

②グランド・ゼロでは僕の足が急に重くなった。そのあたりを描き加えてみた。



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プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

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