絵画に水平線を描くのはどんな意味があるのか?

絵画に水平線を描くのはどんな意味があるのか?


 僕の友人である芸大のデザイン科の元教授から、例年送られてくる「頌立春」のハガキが今年も届いた。彼はどういうわけか日本式に1月1日に届くような年賀状は出さず、中国の春節に合わせて2月の初め頃に届くように送ってくる。ずらして送ったほうがもらう側にもインパクトがあってしっかり読んで(見て)もらえると思ってのことだろうか。実際毎年800枚近い年賀状をお正月に見ていると、いい加減に見てしまう恐れも多々ある。
 彼は現代的なセンスのある男で、はがきに刷られた絵や写真はじつにおもしろい。まあ一般人に見せるにはちょっとはばかられるが、ちょっとエッチでウイットに富んだ映像はなかなかセンスがあり面白い。女子大生に見せたことはなかったが、他の仲間には見せて回った。
 浜辺で撮った水着のパンツがもう少しでずれ落ちそうな美女の写真や街中で抱き合う2人の男などフロリダやニューヨークでの微笑ましい映像が多く、僕を楽しませてくれるものばかりであった。「山彊先生の仲間だから、類は友を呼ぶというところですね」。まあそのとおりですね。友人の金城学院大の先生も僕以上のワイ談の大家だし。小泉元総理もそうらしいね。

デザイン科元教授のハガキ ところがそのデザイン科の元教授、今年のハガキは雰囲気が全然違っていた。遠くに水平線と灯台が写されたごくごく平凡な風景写真だった。もちろん一般的に見れば、素晴らしい写真だ。ヨットの帆の向こうには、青空に湧き上がる雲、はるか地平線の向こうには灯台らしき影、雲の形も面白い。しかしいつもの彼のドキッとさせ後でニンマリとさせる写真と比べると、平凡な風景写真ということになるのだ。
写真右上:デザイン科元教授のハガキ

 これを見た瞬間、僕はおかしい、何かあったのではないかと思った。病気になったとか奥さんに逃げられ意気消沈し、希望を無くしているのではないかと危惧した。これまでの印象と違いすぎている。この彼のハガキ写真は明治の巨匠、青木繁の洋画作品『朝日』を連想させた。青木は作品『海の幸』で知られ、洋画でこの作品は初めて重要文化財にまでなっている。

青木繁 朝日 『朝日』の方は彼の絶筆作品で、太陽が昇る水平線を描いたものだ。最後は福岡の病院に入院していたというが作品はそこで描かれたものだろうか。29歳の若さで亡くなるというのに、作品は穏やかな不思議な雰囲気になっている。太陽に自分の今後の願いを全て託したと思われるような作品だ。写真左:青木繁作、絶筆の『朝日』
 友人の写真作品にはこの太陽はないけれど、その代わりを灯台が担っているのではないか。気になって「どうなったの?何があったの?」とすぐに返信のハガキを書いておいた。
 
雪舟作 山水図
 この水平線と絶筆の話は心理学の本の中でもよく触れられてもおり、僕もこのブログで書いた覚えがある。僕がいま研究しているあの雪舟の絶筆が水平線を描いたものなのだ。それまで一度も描いたことがなかったのに、最後に雪舟は水平線とそこに浮かぶ島を描いている。画集の解説文によると、雪舟が死を覚悟したため水平線のかなたに存在するという須弥山(仏教でいうところの天国)への憧れを描いたものだろうという。このことは水平線だけで無く地平線でも同様なことが言えるそうだ。写真右:雪舟作、絶筆と称される『山水図』
 
 ゴッホは絶筆ではないがピストル自殺をするしばらく前、カラスの飛ぶ地平線を描いている。はるかかなたに存在する天国への憧れなのだろうか。
写真下:ゴッホ作、自殺する間際の作品『カラスのいる麦畑』
ゴッホ作 カラスのいる麦畑

 「山彊先生、ということは写真でいうと、身の回りを撮っているうちは問題ないが水平線や地平線を彼氏がとり出したら、生きる希望を失くした証で結婚しないほうがいいのでしょうか」。こんな話を女子大でしていたら、写真好きの彼氏のいる学生に質問された。まあそういうことになるかもね。青木繁など元気な折は、人物を大きく野性的に描いていたものね。
 「では山彊先生、私の彼氏はドライブで海岸や山方面に行きたがりますが水平線や地平線にあこがれているのでしょうか。やばいですね」。お年寄りならそうかもしれないが、若い彼氏なんでしょう。ならたぶん近くにラブホが多いからではありませんか?

※デザイン科の教授の話、次回に結果を書くことにする。不幸にして僕の予想が当たっていたら友人の不幸を茶化しているようで書けないが。



 さて今回も例によって「平成名古屋百鬼夜行」より海に関係した妖怪を2点紹介させていただく。

㉘ 『知多の幽霊船』   写真右
知多の幽霊船

 知多の常滑から四日市方面を眺めると、伊勢湾に浮かぶ船が蜃気楼で空に浮かんでいるように見えることがあるという。これを人は『幽霊船』と呼ぶ。僕は数年前までここを車で通り日本福祉大学まで教えに行っていた。僕は一度も幽霊船にはお目にかかっていないが、御在所山をバックにすごくきれいな海景色が見られた。



㉙ 『墓に埋められた遺体の肉を食べる7本足のタコ妖怪』  写真左下
 
7本足のタコ
 これは三重県飯野郡に伝わる民話。ここで見かけるタコは7本足で、夜更けにやって来て墓から掘り出した遺体の肉を食べるという。このタコを捕まえて叩いて殺せるのは枇杷の木で作った棒だけだとか。山間の地のここ三重県飯野郡ではタコや海産物が高価で手に入りにくい。貧乏な地で、人々にタコを食べさせないよう誰かが考えた話であろう。
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水平線のお話し面白かったです!!
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プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

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