半沢直樹とゲルニカ

『半沢直樹』『ゲルニカ』


 『半沢直樹』の最終回見てしまった。僕は基本的にテレビはニュースやドキュメント番組、歴史物のノンフィクション番組などを主に見ていて、連続ドラマは見たことがなかった。しかし今回はフィクションドラマである『半沢直樹』を見てしまった。視聴率も高かったと評判だ。僕がこのドラマを最後まで見たわけは、何故そんなに多くの人が見たのか、これがヒットした要因は何か、このスタイルを他社も真似すれば次もヒット作ができるのか等々、気になることがあったからだ。
 僕が『半沢直樹』を見たのは2回目から。新聞のコメントですごく褒めてあったのを見たのがそもそもの始まりだ。日頃はこの類のコメントは、宣伝のためだろうと思ってあまり信用していないが、ふーん、一度見てやるか、と思ったのがきっかけだった。だから斜に構えて見ていた。けれど半分は面白さに嵌っていた。
 しかし、最終回の終わり方には困惑した。ハッピーエンドにはしないだろうと予想していたが、アンハッピーな現実を突きつけ、深刻な問題として考えさせる社会派ドラマの終わり方とも少し違っていた。明らかにこれは続編があるぞという終わり方だ。1年後かそこらにはまた続きが始まるだろう。でも僕が思うに続編は前回の評判に乗っかったものになり、そんなに面白くないだろうという気がする。それでも前の面白さに嵌まっている視聴者は、あの時の興奮を求めてまた付き合わされることになる。
 創造こそが芸術と考えている僕たちアーティストは、自分で新たな作品を創り出すのが仕事で、人がやったことを模倣しても意味がないと考えている。人の作品への傾倒はほどほどにし、のめり込みすぎないようにしなければと思っている。続編はある意味模倣で創造性に欠ける気がする。今後また続編が放映されると、自分の作品への創作意欲が薄れてしまう。
 「今回テレビ放映された部分は半沢直樹シリーズ全体の10分の1でしかない」と数週間前からTBS関係の者が発言していたが、最終回の半沢直樹の証券会社への左遷でやはりそうかと思えてきた。「これだけヒットしたのだから続編もやろう」とテレビ局も池井戸潤も欲を出したのではないか。もしテレビドラマとしてヒットしていなかったら半沢の部長就任で終わったのではないか。ヒットしているからストーリーを変えたと取られるのを避けるため局も作家も「原作の通り」と、しきりに強調している。

座る若い女
 一般的に言って、人は何か1つ大きくヒットすると、その後はその余韻で動こうとする。
唐突にまたピカソを出して申し訳ないが、ピカソもキュービズムでヒットした後、それを取り入れた売れそうな作品にシフトしている。
写真右: ピカソにしてはいい加減な作品『座る若い女』1946
 そのため彼のチャレンジ精神はより新しい作品へシフトすることなく女に向かい、次々と芸術的思考を酷使して女性を口説き始める。貴族の娘オルガは、彼がパラードという前衛劇に参加することによって手に入れ、40近い年齢差のフランソワーズ・ジローはプレゼントする花(アゼリア?)に無数の小さなリボンを結び付けたりして口説いている。ピカソの友人である、有名な彫刻家ジャコメッテイーに言わせると「ピカソのすごいのは25歳の折に、キュービズムを創り出したことだけだ。後は惰性作品ばかりだ」となる。
写真下: 新古典派とか称されるピカソの作品『水浴する男たちと犬』1921 これもピカソにしてはよくない。分かりやすい絵柄とピカソブランドで買い手はつきやすいが。
『半沢直樹』もこのような惰性で今後作られるのではと僕は危惧している。

水浴する男たちと犬

 それでもピカソはその後、絵画の世界では最初の反戦画、『ゲルニカ』を描いたことによって我々日本の子供にまで知られるようになった。当時彼の祖国スペインのゲルニカはドイツ軍に空爆されており、それに対する怒りでピカソは『ゲルニカ』を描いたわけだ。キュービズムという手法は引き続いて使ったが反戦のプロパガンダという新しいコンセプトを絵画に引き入れたわけだ。
写真下: 誰でも知っている反戦画の『ゲルニカ』1937
ピカソ ゲルニカ

 直木賞作家である池井戸潤も今回の盛り上がりで終わるのではなく、それを利用してもう一つ上を目指してチャレンジしてほしいものだ。国民大多数が注目しているから今がチャンスだ。どんな内容でも周囲はまず見てくれる。ピカソもキュービズム作品がなかったら、『ゲルニカ』を描いても無視されたのではないか?『続半沢直樹』も世界的に大きなメッセージを残すストーリーにしてほしい。とすると1年後(?)も観るであろう『続・半沢直樹』に僕は納得するのだが。残り少ない人生を人の惰性で書き上げた作品を観ることで消化したくないのが僕の本音だ。


※さて毎度恒例となりました平成の『名古屋百鬼夜行図』より今回は土居下編を紹介させていただきます。
⑧ 『忍者・土居下君』写真右
忍者土居下君

   名古屋城の金シャチから東北2百メートル程の所に人々との付き合いを断った隠密居住区があった。彼らは土居下隠密同心と呼ばれる。彼らを金シャチとコラボした妖怪画にしてみた。




⑨ 『太郎メデューサ』写真下 

 隠密同心の居住区から東へ2百メートル程の所にあるに久国寺に岡本太郎の創った角だらけの釣鐘がある。日本中の画家で一番妖怪に近いのは岡本太郎だ。その彼が妖怪街道に妖怪釣鐘を創った。この地の妖怪が彼を呼んだのか、岡本が妖気を感知して創りに来たのか。


太郎メデューサ
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プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

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