歯黒べったりになれる?

虫歯ができた 歯黒べったりになれる?

 久しぶりに虫歯ができた。一番奥の歯で外からは分からないところだ。飲み物を飲むと少ししみるから歯医者にでかけたらやはりそうであった。相当大きくなっていたとのことだがレントゲンでしか分からなかったそうだ。元来僕は歯が丈夫らしく、今回も先生に「研磨機が壊れているかと思った。山彊先生の歯は固すぎて研磨機でもなかなか削れないんですよ。この調子だと死後に顔の他の部分が朽ちても、歯だけは残りますよ」と言われた。おー、そうか。ならば歯だけが残る妖怪を作り出そうとこの時、すぐ思った。

臨海学校で
 ここの歯医者の先生は僕が22歳の折り、初めて赴任した楠小学校5年生のクラスの生徒だ。彼はとても真面目で僕を尊敬してくれて、頭もいい子だった。この時の生徒達とは一緒に海の家の合宿に参加したりした思い出がある。
写真上:小学校5年生「海の家」でのスナップ写真。僕のクラスの生徒達と参加した全教師。僕は後列中央右でやせた体の男。小川君はいちばん右で頭に水中眼鏡をしている。
 当時楠町一帯はまだ田んぼや畑も多く、いろんな生徒の親からは大根やニンジンなど野菜を常に頂いていた。家庭訪問があると子供達の親が僕を自転車の後ろに乗せて次の家まで運んでくれた。当時は年上のおばさんと思っていたが、小学生の母親なら結構若い。若いかーちゃんの腰にしがみついている様子、今なら問題になるかも知れないが、「先生、のりゃー!」と言われれば、新任教師としては断るすべを知らない。
 またある時は、理科の授業でカエルの解剖実験があると知るとバケツに何十匹と親が届けてくれた。それも小さいカエルだと子供には分かりづらいからとガマガエルの大きなものも入っていた。全員に1匹以上あるのだから、細かいことを僕は言わず、説明のあとはそれぞれ自分で解剖させようとするが、女の子はキャーキャー言ってカエルを逃がし、そのカエルは教室内を飛びまわっている。これはいけない、まずは麻酔薬で眠らせないとだめだと思い、僕は保健室へ行き、クレゾール液を持って来て生徒達にカエルの頭をつっ込ませた。カエルはおとなしくなったが死んでしまい肝心の動いている心臓を見ることができなくなってしまった。それに教室中がクレゾ―ル液の匂いに占領され、まるで死体置き場の匂いになり、お笑いのドタバタ劇の現場のようになってしまった。カエルの生態系が侵されているといわれる現代から考えると問題だらけだが、おおらかで古き良き時代であった。
 こんな頃、僕が大学時代に描いていた作品がニューヨークのギャラリストの目にとまり我が家へも彼等が訪ねて来るようになった。そうなるともう授業どころではなくなり、僕は画家として生きていきたいと思い、1年間で退職願を出すことにした。こんなことをこの歯科医の先生と会うと思い出す。

 ところで僕の歯だが、忙しい頃はこの教え子の家まで来る時間が無く、近所の歯医者で済ましていた。妻もそうであったが、ある時あまりに近所の歯科医の治療がひどかったのでどこかいい歯医者はないかしらと聞かれ、一度この先生(北区如意にある小川歯科)を紹介したらそのうまさや誠意に感激し、遠くてもいいからとでかけるようになった。

歯黒べったり
 さて歯科医から帰った僕は、早速歯だけの妖怪はいないか探してみた。今月の26日(妖怪の日)には妖怪本の本を出すからもう妖怪にこだわる必要はないが、もし「続編でも出しませんか」と出版社から言われたらと思い次を用意しているのだ。

 歯だけの妖怪、やはりいるものですね。『お歯黒べったり』と言って江戸時代後期の画家、竹原春泉が『絵本百物語』の中で描いている。
写真左:竹原春泉画『歯黒べったり』
 添えてある文によると「ある男が社のまえで拝んでいる美しそうな娘の後ろ姿を見て、悪戯で声をかけたらその女が振り返った。顔には眼も鼻もなく黒い歯を見せながらけらけらと笑ったという」とある。どうもこの女、『のっペらぼう』に化けそこなった狸や狐ではないかと言う。だから歯だけが残ったのだろうか。ではなぜ黒い歯が飛び出た口だけ残したのだろうか。目だけとか鼻だけとか、僕の場合は髯だけとかあっていいのではないか。
写真右下:山彊の歯ひげべったり

歯ひげべったり
 歯も生娘の白い歯でなく既婚者の証しである黒にしたのはどうしてなのか。より色彩的にも怖くしたいのか、「なんだーおばさんのお化けか」と落胆させるためなのか。普通こんな場合はネコのようなとがった歯にするとか、歯無しのバーさんにして凄みを出そうとするのだが。「山彊先生ならどんな口にするの?」。怖い妖怪はもう出つくしたから色っぽいものにするね。口の中から無数に蝶々が飛び出したり、ピンクのハートチョコがはきだされたりするね。平成の妖怪はこれでなくちゃ。
写真下:蝶々べったり
蝶々べったり
 (小川歯科には奇麗な歯にする歯科衛生士さんもいて「普通の歯ブラシで歯を磨くだけではだめですよ。歯と歯の間を掃除する歯間ブラシを使わなくては」と言う指導も受けた。きれいなお姉さんに言われるとついその気になってしまう。だが奇麗だと言っても彼女、マスクをしていたから口周辺には責任は取れないけれどね。今度言ったらマスクを取って見せてもらおう。蝶々が無数に出て来ると嬉しいが)


歯間ブラシ
写真左:もらった歯間ブラシ。これでいつまでも歯を残してくださいの意か(歯が無くなるとアルツハイマーになる確率が俄然増えると言う。完璧な歯を持つという僕は死ぬ瞬間まで正常と言うことか。ぼけてみたい気もする。責任感も薄れ他の美女と歩いていて妻に見つかっても「あんたと思っていた」で済んでしまうものね)
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プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

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