恐山のイタコから中国偽札に

「恐山のイタコは妖怪ですか」

 妖怪に関する雑談をしていたら「恐山のイタコは妖怪ですか」と突然、僕のゼミ生に質問された。学生達の地元で何か妖怪に関する話はないか、聞こうとしていた折の質問だった。僕は即座に、「はい、妖怪と信じる人もいます」と答えた。
 妖怪と言う実態のないモノの定義は難しく、それぞれの専門家が諸説を唱えているが、結局は多くの妖怪学者が認めるように、妖怪に完全な定義はない。だから妖怪は幽霊、お化け、物の怪、神憑った人やイタコ等を含むと言われても一概に間違いとは言えない。従って森羅万象、この世に起こるあらゆる出来事の中で現代の最新科学でも説明できないことがあれば、それは妖怪のなせるわざと解釈できる。しかし例えば江戸時代と今日では科学の発達において、大きな差があるので、あるモノが妖怪と解釈されるか否かは時代によって違ってくる。また人それぞれの考え方も千差万別だから、人によっても賛否両論だ。要するに、その人が妖怪と信じれば、妖怪と言うことになる。

恐山パフォーマンス個展
 僕に質問をしたこの学生は若いのに、昨年恐山へ行ったという。そこで気付いた疑問なのだろう。ここのイタコは毎年7月後半、恐山祭り等で登場し、お金を払うと、その客が望む死者を呼びだしてくれる。イタコはその死者に乗り移り代弁をしてくれる。僕は30代の頃、恐山の賽の河原で自分で作った偽石を使って、崩れない石山を作ると言うパフォ-マンス個展をやった。写真右:恐山でやった僕のパフォーマンス個展

 その折、イタコに500円札(当時は500円札が流通していた)を出して、1年前に交通事故で亡くなった友人を呼びだしてもらった。1000円出すと30分しゃべってくれることになっていたが、イタコは目が見えないから500円札でも1000円と思って長くしゃべってくれると期待した。ところが彼女は目が見えないのに15分するとしゃべるのを止めた。周りに時計はなかったし、1000円札と500円札がどうして区別できたのかも不思議だった。
 
 そこで「イタコは妖怪ですか」と質問した学生に「目が見えなくても500円札と1000円札の区別が出来たから、その不思議を妖怪のなせるわざと思う人にとっては妖怪なのだろう」と答えたのだ。ところがここで彼女の反撃をくらった。

日本の札の見分け方
 「先生、目をつぶっていても私は1000円と5000円、10000円の区別が出来ますよ。私って妖怪ですか」と言われた。そこで僕は3種類の札を出し、彼女に当ててもらった。目をつむって札を触っただけで、彼女はばっちり当ててしまった。
 そしてその種明かしをしてくれた。1000円札は、野口英世の映像の2cm右に2cm×3mmの透かしが1本入り、しかもへこみまで付いているのだ。同様に5000円札の樋口一葉にはそれが2本、10000円札の福沢諭吉には3本入っている。
写真左:目を閉じていても札の種類を見分ける法。黄色で示した線が透かしの部分
 日本の紙幣には常にこのように盲人が識別できる細工がずっとされているということだ。なるほど恐山での不思議もこれで解決した。


 そうなると世界中の紙幣にそのような仕掛けがあるはずだということに思い至った。そこで気付いたのは、僕が中国で掴まされた偽札の20元札だ。街中の飲食店でラーメンを食べてお金を払った時、僕はこの偽の20元札を受け取った。もちろん偽札と知る由もない。その後デパートで買い物をしてそれと知らずに20元札を出したら、レジの女性にこれは偽札ですとはね返された。偽札なのに問題にもせずに僕に返したことから判断するに、いっぱい出回っているらしい。

中国20元札偽物と本物
 右の写真の上の方が偽物だが、本物と思われて何万回と使いこまれていたのがその古さから分かる。僕がデパートで使ってはね返された例の20元札だ。ここのデパートのレジ係は見分ける訓練をさせられているのだ。帰国後、僕も2枚を比べてみたら、見分けることなんて簡単だと気付いた。この札の上には2ミリほどの細い銀色のテープがとびとびで張られている。それが偽札は5ミリほど左にずれている。黄色いテープで分かるようにしたから確かめて頂きたい。
写真右:中国20元札の偽物(上)と本物(下)を見分ける方法。黄色で示した縦線が20の中央を通っているのは偽物で、20の0のところを通っているのが本物
 だがこの時は、偽札と本物の違いについて納得しただけで、日本のお札の3種類の違いには、思い至らなかった。
 この偽20元札、僕がデパートに持ち込むまでは本物として通用していたのだ。僕がもう1度別の街中の小さな店で使えばまた本物として通用したと思う。僕が20元札を手にしたのは旅行中、数枚だけ。その1枚が偽とすると中国では相当数の偽札が出回っていると考えられる。現にデパートのレジ係は偽札だから没収するかと思いきやしなかったのだから、偽札が無くなることは当分はなさそうに思われる。


スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

カウンター(since2011.1.1)
プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR