妖怪屋敷 第37弾 伊奴(いぬ)神社と犬神憑きを祓う賢見神社

妖怪屋敷 第37弾
伊奴(いぬ)神社犬神憑きを祓う賢見神社

伊奴神社
 名古屋の中央にある尼ケ坂の妖怪銀座から北へ2~3kmの所に、日本では一般に知られているものとしてはここしかないという犬を祭る伊奴(いぬ)神社がある。
写真右:伊奴神社
 安産祈願や子宝祈願の神社として知られる神社だ。戌年の元旦には参拝者で身動きが取れなくなる。全国から犬好きも集まるらしい。犬を祭る神社はここしかないから、香取慎吾や末広涼子が出演した映画『LOVEまさお君が行く!』でも、大ヒット祈願のために二人がここに来ている。この地出身の青木さやかも妊娠祈願か安産祈願に訪れたとか。本堂前には石の犬彫刻もある。

犬の王の像
 建立は天武天皇の御代にこの地稲生で取れた米を皇室に献上した際、神様を祭り社殿を創建したのが始まりと言われている。主神の一人が伊奴姫神と言うことで伊奴神社の名が付いたようだ。この地は稲生(伊奴)の名のごとく稲作が盛んであったようだが近くを通る庄内川が氾濫を繰り返していた。それに困った里人が山伏に氾濫を防ぐよう頼んだら、御幣を立てて御祈りをしてくれた。それには犬の絵と犬の王と言う文字が書かれていたとのことで、その後洪水はおさまったと言う。
写真上:犬の王の石像
 何故犬の絵なのか分からないが主神の伊奴姫から付けられた伊奴神社との関連と思われる。
 犬の神社は日本に一社だけで、後はあっても秋田の秋田老犬保存会が作るものや、静岡県の黒犬神社のように特殊なものだけだ。これが猫になるとものすごく多い。宮崎県田代島の猫神社、高知県須崎市の猫神社、京都西陣の称念寺にあるもの等々、凄い数になる。

犬神家の一族 「山彊先生、『犬神家の一族』という横溝正史の恐ろしい本が大ヒットし、映画にもなったけれど、あれは犬神様の話ではありませんか」。『犬神家の一族』は犬神を絡めたものではなく、一代で財をなした犬神佐兵衛の遺産相続から始まる話で、犬神は名字であって、妖怪がらみではない。だが中身は妖怪がらみのように怖いお話。
写真右:映画『犬神家の一族』のポスター
 
 作家の横溝正史は神戸市中央区の生まれ。彼の家から海を挟んで南西方面に四国山脈が眺められる。きっと彼は、高い峰が連なる険しい四国の山々を、おどろおどろしい妖怪が住むような地として見ていたのではないか。
 その四国の山奥に「犬神憑き」伝説なるものがある。横溝正史はこの話を知っていたと思う。だからここから拾って『犬神家…』と題名を付けたのではなかろうか。
 犬神憑きと言うのは、誰かに恨みを抱いた者が、その恨みを晴らすのに犬の怨念を利用しようとするものだ。その方法として犬を頭部のみを出して生き埋めにし、または支柱につなぎ、その前においしそうな食物を見せて置き、餓死しようとする瞬間にその頸を切る。すると頭部は飛んで食物に食いつく。(妖怪坂である尼ケ坂の首切り場でも首が飛ぶとお手伝いさんが僕に話したが、怨念の強い首はこの犬のように飛んだかもしれない)これを焼いて残った骨を器に入れて、その霊を犬神様として祀る。凄まじい死に方をした犬の怨念が永久に呪術者に憑き、超能力を得て他者に呪いをかけたり、取り憑いて願望を成就させたり、滅ぼしたりする。
 犬神に取り憑かれた者は、異常なことを口走り、四つん這いになって動き回り、犬神の祭祀者の呪いを実行に移すのである。また取り憑かれたその人が死ねば、犬神はその子供に、その子が死ねば、その孫に…と、一旦取り憑かれれば最後、その犬神がその家の血を去ることは決してないのである。まるで吸血鬼伝説のようである。いったん吸血鬼に血を吸われると吸われた人も吸血鬼になってしまい、永久に普通の人間には戻れないというあの伝説によく似ている。
 「犬神筋」といわれるのは、犬神に取り憑かれた家系のことである。犬神は婚姻によっても広まっていくと考えられていたため、地方によっては、犬神筋との婚姻は毛嫌いされる。犬神筋は恐ろしい家系と恐れられ、犬神の家の女性は結婚できず、差別と迫害を受けたという歴史もある。犬神は祭祀者が犬神が十分満足するよう祀っていればいいが、さもないと他者に取り憑いて害を及ぼすこともあると言う。僕は狐憑きの話はよく聞いたことがある。狐が憑くと、その子は親の目を盗んであぶらげを食べたがるとか言ったたぐいのことだが、犬神憑きより怖くなさそうなイメージだ。一説によると四国の山奥には狐が住んでいないため、犬神伝説が広まったとも言う。

賢見神社 この犬神に取り憑かれた者をお祓いする神社が日本で唯一つ四国の山奥にある。山城町の賢見神社がそれだ。
写真左:四国にある賢見神社
ここでは独特な発声方法の高音と低音で祝詞をあげ、一般には榊や神垂で行うお祓いをここ賢見神社では鈴の付いた金幣で行うということである。それだけ犬神の調伏は大変なものと言うことなのだろうか。さらに四国の高い山の中の人里離れた険しい急斜面に建てられていることも神秘感を呼び起こす。
 横溝正史はこのことを知っていて、犬神伝説をヒントにおどろおどろしい「犬神家の一族」を書いたのではないだろうか。もちろん前記したように、犬神家は単に犬神という名字で犬神筋というわけではないが、物語全体を包む雰囲気は共通するものがあるような気がする。
 今の世の中、犬神に取り憑かれるなんて信じられないが、昔は精神を病んだ者や痴呆症になった者たちを、全て犬神や狐に取り憑かれたと考えたのではないか。
 この賢見神社は山奥にあり、参拝者も少ないのではと僕は踏んだが、どうしてどうして多くの参拝者を集めているらしい。昨今テレビでも心霊スポットとして取り上げられ、女性の参拝者が多くなったとのこと。深山の中、独特の祝詞と金の鈴でお祓いをする、犬神の妖怪、など異次元空間に迷い込んだような気分にさせられるのだろう。
 僕は犬神はちょっと怖いけど、美しいメスの狐にならちょっとくらいは憑かれてもいい。賢見神社は狐憑きのお祓いもするというから、お祓いに行って異界の雰囲気を味わってみるのもおもしろそうだ。


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プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

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