大橋忠幸展と松永真帆子展始まる 於東市民ギャラリー

大橋忠幸展と松永真帆子展始まる
東市民ギャラリーにて   7月29日まで

 夏のさなか、レベルの高い個展が2つ重なったので見に出かけた。東市民ギャラリーは名古屋芸術大学や名古屋造形大学の学生の展覧会が多く、たまにすごい作品展示がある。他の美術館やギャラリーは壁に釘を打ったりすることはできないが、ここは釘打ちがOKだから人気がある。

大橋忠幸 裸婦
 大橋忠幸は毎年のようにどこかで発表している。寡黙で多くを語らず人を押しのけて自分を押し出そうとする作家ではない。だからこの作品が、あらゆる人種の人々がコネのあるなしにかかわらずアートを発表するニューヨークにでも展示されていれば、もう少し評価されるかもしれないと思わされる。彼のこれまでの作品は自分のおばあちゃんのヌードを描いた黒と灰色調の油絵だった。僕はかねがね美術作品としてのヌードは老婆に限ると思っていた。大学時代、ヌードデッサンの授業でモデルを見る時は、ストリップ劇場へ行く代用でもあり、きれいな若いねーちゃんのほうがよかったが、本当の裸婦のすごさは年輪を重ねた体が一番だと気付かされた。金城学院大学はこのごろ40、50歳代のおばさん大学生も多い。そんな学生の一人がいつも嘆く。「どうして若い女の子ばかりがヌードモデルなのよ?」と。これには僕も同感。
 僕が一番描きたかった裸婦はきんさん、ぎんさんが100歳前後で健在だった頃の裸。藤原紀香の裸よりよっぽど味があると思う。藤原紀香は見ているだけで充分だ。もちろんきれいだが、単にヌード写真かマネキンを見ている感じになる。大学生の頃中学の同級生でメチャ可愛かった子とデートしたことがあるが、まるでマネキンと話しているみたいで血の通った人間と話している気分にならなかった。一夜限りの娼婦ならこれでいいが結婚まで考えたらとんでもないと思った。やはり人間は気持ちや性格に魅力が無いと飽きてしまうと思ったものだ。「NHKの平清盛で常盤御前役をやっている、今売り出しの武井咲さんならどう?」この質問は僕を男としての立場か芸術家としての立場かによって変わってくるが、芸術家としてみるなら興味ないね。
 大橋忠幸は今、もう祖母を描いていない。もう亡くなってモデルとする体が無いからだ。死んだ後でも描いていたらちょっと気持ち悪い。ただの肖像画家か亡霊に取りつかれた作家にも思えてしまう。今はおばあちゃんとピカソのキュービズムを組み合わせ、モダンな作風になっている。写真上:大橋忠幸の作品「裸婦」これはこれなりに楽しいが、僕は以前の作風のほうが好きだ。体は年寄りだが胸などは30代と感じられるおばあちゃんの裸婦が、異様で魅力的だった。おばあちゃんは孫のため裸のモデルを承知した。きっと幸せな最後でなかったかと思われる。
 名古屋の有名な作家で稲垣幸二がいるが彼も愛知教育大学の教師の頃、教え子の学生と結婚しそれから20年ぐらいに渡って、奥さんの裸を描き続けていた。彼もすごかった。40歳近くになった妻も描いていた。サルバドール・ダリも50歳近い妻のガラを平気で描いていた。稲垣の奥さんもガラ並みに凄い。自分の裸を毎年描かせ、それが東京都の美術館や名古屋の美術館で発表される。奥さんもすごいと尊敬したものだ。だが近ごろは描かなくなった。だから作品も急激に魅力を無くしていった。彼が嫌やがったか奥さんが嫌がったか知りたいと思っているが。ガラは死ぬまで描かせている。

松永真帆子 孤独
 さてもう一方の松永真帆子だが彼女は今、金城学院大学の芸術表現療法学科の院生で絵で生き残ろうとしている数少ない学生の一人だ。彼女自身は早く結婚してその後本格的に描きたいという願望があるらしい。これはある意味正解かもしれない。一般の女子芸大生は芸術のため結婚はしたくないといい、男の方もそう思ってしまい婚期を逃しやすいが、彼女はその点割り切っている。また作品も金城学院大学生らしくなくていい。
 歴代の金城の芸術表現療法学科の卒業生の中で一番やる気があり、作品の出来もすごいのではないか。孤独な自分を客観的に見据え、自分の思いを紙飛行機に託し飛ばすがそれが誰にも届かない虚しさを良く描いている。
写真左上:松永真帆子の作品「孤独」

自作の前で
 だが美術は海千山千の世界。自分だけの絵の世界に浮遊していても生き残れない。画家として認められるには数万分の一ぐらいしかない確率の世界でどうやって生き残るか。はたまた、若くてきれいなうちに結婚し、3食昼寝付きでお金の心配は一切なしで絵を描かせてくれる夫が見つかるか。だけどこの思考、どうもお母さんの押し売りで彼女もそれに染まったような気がしないでもない。僕の若いころ、金城の生徒たちはこんな雰囲気であったことが思い出せる。

写真右上:作品を前に、お見合い写真のつもりで恩師の僕が撮る。
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プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

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