妖怪屋敷 第16弾 パプアニューギニアの妖怪

妖怪屋敷 第16弾
我が家にいるパプアニューギニアの妖怪たち

 妖怪好きな者に言わせると「手塚治虫か消えても水木しげるは残る」と断言する。妖怪ファンは魑魅魍魎が跋扈する水木ワールドに熱い思い入れを抱くのだろう。妖怪は知識とか理性で好かれるのではなく、それぞれの心の中に棲みつくからなのか。
達パプアの妖怪
 二科展の特選作家、私の仲間でもある倉掛京子さんもその一人だ。彼女はいつも僕のブログを読んでくれていて感想を述べてくれる。数日前にも僕の妖怪屋敷シリーズを読んだ彼女から妖怪情報のメールが届いた。「先日妖怪好き美女おばさんグループで天理の民俗博物館へ行ってきた。その中で異彩を放っていたのがパプアニューギニアの妖怪面たち。その日からの夢の中にも度々登場する」と。きっと彼女のことだから妖怪を下僕にして足でも揉ませている夢ではなかろうか。二科展の作品もそれに近いから見に行ってほしい。彼女はパプアの妖怪の写真も添付してくれた。
写真右上:天理の博物館にいるパプアニューギニアの妖怪達 倉掛さんの添付より
 彼女への返信で「倉掛さん、パプアニューギニアへは僕も一人旅行をして、酋長と掛けあって、たくさんの妖怪お面やグッツを、僕の時計やシャツ類と交換してもらってきてますよ。だから我が妖怪屋敷まで会いに来て!」とメールした。その彼女、門かぶりの松がある古い屋敷を壊してモダンな建物にしてしまったから、毎月1回、お神酒を建物の周りに撒いていると言う。彼女の情報によると歌手の森公美子も妖怪と対話ができる人らしい。
写真下:酋長がつける妖怪封じのペンダント
妖怪封じのペンダント
 ところで僕のパプアニューギニアへの旅はハラハラドキドキの連続だった。この旅は危険だなと判断した僕は、旅行社に飛行機の乗り継ぎチケットやホテルの予約を入れようとしたが、旅行社から首都のポートモレスビーまでの航空チケットしか用意できないと言われた。要するにホテルの予約などできないところなのだ。それでも僕が出かけたのは目に見えぬ妖怪が呼んだのかもしれない。
 首都ポートモレスビーに次ぐ2番目に大きな町、ラエでは暗くなると周囲の山がぴかぴか光る。落雷が頻繁に発生しているのだ。夜空から妖怪の卵が降ってくるようだ。耳を澄ますと何かの生き物が森で騒いでいる。僕を呼んでいるような気もする。人々が妖怪の存在を信じてしまうのもうなずける。
 そこからバスで7時間程の所にあるゴルカでは、治安が悪いから午後5時には外出禁止になる。5時近くなるとバタバタッとあっという間に全ての店が閉まる。妖怪が出て危険?なのではなく、頭の黒い妖怪(現地ではラスカルと呼んでいた強盗集団)が頻繁に出るかららしい。以前ドイツの女性3人が真昼間、裏道に入ってしまったら、まず女性集団に身ぐるみはがされ、その後仲間の男たちに襲われたという。

 そういう僕もホテルで危ない目にあった。僕のホテルは高い塀に囲まれていて各部屋はバンガロー形式の個別の建物だった。現地では一番いいホテルだった。夜の11時頃僕の部屋のドアを誰かがノックした。この時間だから妖怪のお出ましかと構える。違っていた。「警察のものだがパスポートを見せろ」と言う。こんな時間におかしいと思いドアののぞき穴から覗いたけれど相手の姿が見えない。旅慣れていて怪しいと感じた僕は危険を感じ、直ぐフロントに電話を入れる。すると、「それはラスカルだからドアを開けるな!」と言う命令。続くノックに「Bath.(バスに入っているから)Wait a moment」と知ってる英語をとっさに並べたてて返事をし、その間にテーブルや家具類をドアの前に積み上げ、無理やりドアが開けられても、直ぐには入れないようにした。花びん類等も置いて大きな音がするようにもした。そのうちにはフロントから連絡を受けたガードマン(チエックインの折、銃を持った屈強な二人のガードマンをフロントで確認しておいた)がやってくると思った。 
 ところがホテル側も怖いのだろうか、全然やって来る気配がない。僕を救うために動いたら、きっとフロントがやられると恐れたのだろう。客の一人や二人なんかどうでもいい。フロントには金庫や客から預かったパスポート類もある。旅の身の危険は自分で守るのだという鉄則を再確認した。ノックは2時間ほども続いた。はっきり時間は分からないが恐怖のため長く感じられたかもしれない。その後諦めたらしくラスカルは去っていったが、またいつ襲ってくるかもしれないという恐怖で全く寝られず、そうこうするうちに夜が明け始めた。時計を見ると4時だった。フゥー!朝が来たからもう大丈夫かな。僕の一人旅はいつもこんなふうだ。

 この地の人は日本のコウノトリではないが、赤ちゃんも海の妖怪(精霊)が持ってくると、かつては考え、風の強い日は女の人は泳ぎに行かなかったという。妊娠するのは男女の性交によるのではないと考えていたわけだ。
真っ赤な口の女性 だからか性にはオープンで宿の前にいる娼婦のおばさんに「やるかね!」と大声で言われてしまった。顔を見ただけで喰われそうなのにそれでも同衾したがるのは妖怪しかいない。声をかけた女は口の中が真っ赤で、人の血を吸ったような感じだった。これは彼等の嗜好品でガムの様な物を噛んでいるせいだ。ある種のナッツとマスタードの茎に石灰を付けて噛むと口の中が赤くなり、覚醒作用も興ると言う。
写真右:僕に真っ赤な口で声をかけたパプアのお姉さん。食べられそう!
 またここには古くから伝わるおもしろい性的観念があって、女性の体の全ての液は男性にとって危険であり、そのため男は近付かない方がいいと言う。女性と関係するとまず痩せて病気になり、ひどいと死んでしまうと言われている。だから男と女子供の住むエリアは分けられていて、男の子供は成人すると男のエリアに移る。生殖がなければこの地の人々は今存在しないわけだから、多分この言い伝えは、性が野放図になることを戒めたものかもしれない。しかし僕が行った時も男女のエリアは存在していた。

 「山彊先生の話はすぐ性文化に行くけれど、あのお面はそもそも何のために作られるのですか」。(おっと失礼、いつものくせで、お面の話でしたね)
パプアのお面お面を被った僕
写真左:パプアの妖怪面  写真右:パプアの妖怪のお面を被った僕

 一口では説明できないがお面はあの世とこの世の接点にいる存在と思えば大体は当たっている。祖先のお面を被れば先祖があの世からやって来たということになる。獣や鳥のお面も死と生の狭間にいる妖怪と思えばいい。人々は人が生霊と肉体からできていると判断し、死ぬと生霊は死霊となりしばらく遺体に留まるが、いずれ祖霊になって浮遊すると考える。その粗霊を呼び戻したいときにはお面を被るわけだ。彼らの日常は生と死のあいだでの生活が多いのだ。
 「水木しげるゆかりの鳥取の境港市にはそんな呼び戻された妖怪がうようよしているのですね」。死と生の間、すなわち喪に服さねばならない49日の期間がここでは永遠に続くようなものなのだろうね。だから人々はあの世へ行く前にまず、その前には何があるか様子を見に行くのだろう。「山彊先生宅も来客が多いのはそんなところね!」


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プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

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