「ポジション2012名古屋発現代美術」展 名古屋市美術館

よくぞやった、「ポジション2012名古屋発現代美術」展
名古屋市美術館6月2日~7月16日
愛知県生まれの者がほとんどいないのは何故?

会場風景
 今、名古屋市美術館で「ポジション2012名古屋発現代美術」展が開かれている。写真右:会場風景
公立の美術館で大きくこの様な催しがされるということは、この地もやっと国際都市並みになったかなと思える。「そうじゃないでしょう、先年は県が愛知トリエンナーレ展を開催したじゃない」と言われる方もいる。あれはプロデューサー等ほとんどが県外の者達。もし愛知県内の人を選んだら日展か公募団体中心の1世紀前の美術展になったと思う。「山彊先生知らないの、この地の芸大関係者の作家も多く出品してたじゃない?」それも違う。自民党政権が民主党になる時に文科省が余っているお金をばらまいて、文化育成に使うよう愛知県にも1億円を配った。このお金を愛知県はトリエンナーレの1年前に口封じのために県芸大、名芸大、造形大にばらまいた。つまりこれらのお金で大学の教授や関係者達に参加させている形をとり、県外の人達にトリエンナーレを仕切らせることに対する反発や不満を封じたのだ。これをもらえなかった美術系大学の教授がすごく怒っていて、僕も調べて全容が分かったのだ。
 今回の名古屋市美術館の現代展は名古屋市の費用で、名古屋市の学芸員が企画立案してやっている。これはすごいことだ。内容も保守的な名古屋市民に迎合していないところに好感が持てる。
 名古屋人のほとんどは美術に装飾性を求め、ついでに権威主義的な見方もしている。作品が飾れるものであったり有名大学の教授の作であったりすると安心する。「先生、もうそんなこと気にする美術関係者はいませんよ」。そうではないね。以前、ある公立美術館が上記した権威や装飾性を重視するといった名古屋市民感覚に合わない作品を選び購入したら、市会議員がどなりこんだと言う。名古屋で権力を持った絵描きが市会議員を動かしたのだ。美術館ロビーで怒鳴られてごらん。首が飛ぶのを覚悟した学芸員でない限り、2度とそんな作品選びはしないと思うはずだ。

 さてこの現代美術展だがこの地が持つ負の価値観の逆転があり、僕はあのスイスやニューヨークで1918年に行われたデュシャンやエルンストで知られるDADAの美術展をまず連想した。やっとこの地も100年遅れであのレベルになったのかと。
 この美術展ではDADAと同様に到底売れないであろう作品、到底飾っておきたくない作品が中心で僕は見て楽しかった。最初ざっと早足で会場を回った時は、「何だ、坂本夏子さんだけが目立つだけではないか」と少し落胆した。その理由を考えてみるに、絵そのものが直感に訴えかけてくる迫力に欠けていたのだ。その後じっくり作家とも話をしながら、また説明を聞きながら見て回ったら、いい作品群であることに気付かされた。しかし芸術作品というものは作家の解説や添えられた説明文を見て観賞するものではないから、その点に今回の作品群の弱さを感じた。また画家の制作意図と会場での展示方法に齟齬があったのも落胆の一因だったと思われる。

文谷有佳里作品 文谷有佳里さんのドローイングはその場で描いている様子を確認すると、彼女の言いたいことが分かるなーと共感を呼ぶ。さすが音楽科出身だけあって、ピアノのリサイタルのようにそこで弾き続けている自分を見せない限り、作品にならないというパフォーマンス作品であった。これをパリのポンピドーセンター前かニューヨークのMOMAの中庭でやるとおもしろいと思った。1日だけではだめで館長が気の付くまで数カ月も覚悟でやってみたらどうだろうか。写真上:文谷有佳里の作品(作者は愛知県芸大の音楽学部卒。それを知って作品を見るとより興味深い)

川見俊作品
 川見俊さんの風景画ももう少しうまく並べると、2~3秒見ただけで、意味するところが分かってもらえると思った。簡略化し、平面化した作品の上に小さな現物写真と説明が掲げてあった。あれは同寸の写真にし、説明文を排除するとインパクトがすごかったと思う。写真右:川見俊の作品
 大崎のぶゆきさんの映像作品は一発で意味することが分かってよかったが、福島をテーマにするともっと人々の共感を呼んだのではないかと思う。消滅するというアイデアで行くなら、僕ならば千里の万博会場に岡本太郎の「太陽の塔」横に真にそっくりなミニチュア作品を本物もどきに置き、その中にダイナマイトを入れ爆破させ消滅させる。それを超スローモーな動く映像にして5メートル以上のスクリーンに映し出す。社会性もあり、まさしく「芸術は爆発だ!」となる。これぐらいの映像を今後大崎さんには期待したいのだが。

坂本夏子作品
 坂本さんは欲が無さ過ぎる。写真左:坂本夏子の作品(何か玄侑宗久の「中陰の花」の表紙絵にすると合そう。次作の表紙に売り込んでみてはどうだろう。きっとOKが出る。彼女は作品がいいから、後は行動だけだと思う)
堀科学芸術財団がやっているDアートビエンナーレでは2度のチャンスがあったのに、参加していない。しかも一度は愛知県美術館の実力のある学芸員に推薦してもらっているのに断っている。2回展では出していればまず北京展に選ばれていただろうし、そうすればバーゼル行きも多いにあったと思う。Dアートビエンナーレの出品者の一人の和田裕美子さんは北京で超大物コレクターの黄さんに認められ、今彼の招待で北京に滞在している。そこでの滞在の1年後には、北京での大個展やバーゼルでの発表も決まっていると言う。Dアートビエンナーレは田舎名古屋の展覧会と思っている人がいるかもしれない。だが村上隆や奈良美智を担ぎ出した小山登美夫さんや世界を飛び回って、ほとんどの大コレクターとも懇意なシンワアートの倉田陽一郎社長が応援している東京や大阪にはない、画期的なコンクール展である。当財団はこの美術展に毎回2千万円もつぎ込んでいる。チャンスを捨てるべきではない。
 よく「ゴッホは貧乏で、認められようという野心もなくそれでも歴史に残った。いい作品さえ作り続けていればいずれ誰かが評価してくれる」という人がいる。とんでもない。ゴッホは買ってほしい、認めてほしいと切望し、以前自分が勤めていて首になった画廊のオーナーにまで、何か理由をつけては幾度も手紙を書き、時折見本作品まで送っていたと言う。オーナーはまともに手紙も読まず、送られた作品もごみ箱行きだったとか。ゴッホは認められるためにはあらゆる努力をしていた。ロートレックが自分の家でパーティを開くと早めに出かけ、自分の作品をロートレックに無断で部屋に飾り、終わるとこそっと持ち帰るのだ。これぐらいの執念があったから弟テオも応援したのであろう。
 僕が気になるのは、今回の美術展に関してのマスコミ発表が少なく思えることだ。作家たちは出したらおしまいではなく、数人で組んで新聞社やテレビ局等へピーアールに行ったらどうか。僕がざっと見ただけでは作品内容を掴めなかったように、説明をしに行く必要があったのではないか。それが選んでくれた美術館への感謝の印になるのではと思う。(当然やってるよと言われるかもしれないが)。取り上げてくれたマスコミの数や入場者数は展覧会の評価につながるのだ。多ければまたこのような企画が打たれる。
 一つおもしろいのは選ばれた10人に愛知県生まれがほとんどいなかったことだ。名古屋人はケチでお金にならないことはやらないと言われている。だからこの様なお金にならない作品は作らないのだろうか?
 設楽陸さんだけ名古屋生まれだが、彼の父は県芸の教授。県芸を名古屋人は東京都長久手村と呼んでいたから、息子も名古屋人に入らないかも。とすると作家は全て県外人。まさしくエコール・ド・パリならず、エコール・ド・名古屋だ。ピカソやモジリアーニの時代のように街を盛り上げるのは他県人なのだろうか。


※会場風景以外の写真は全てこの美術展の画集より
スポンサーサイト

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

まとめtyaiました【「ポジション2012名古屋発現代美術」展 名古屋市美術館】

よくぞやった、「ポジション2012名古屋発現代美術」展名古屋市美術館6月2日~7月16日愛知県生まれの者がほとんどいないのは何故? 今、名古屋市美術館で「ポジション2012名古屋発現代

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

カウンター(since2011.1.1)
プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR