FC2ブログ

名古屋妖怪三十六景より ㉟㊱

名古屋妖怪三十六景より ㉟㊱


㉟「妖怪 恋の水」
出現場所:愛知県知多半島美浜 恋の水神社


 僕が以前教えていた知多半島にある日本福祉大学では、ゼミ生に課題として毎年学内新聞を作らせていた。特集テーマはその時々で色々だが、ある折「恋を告白するのに一番成功する場所は?」というのを取り上げた班があった。その担当の学生達は食堂等で学生仲間にアンケートを取っていた。野間の灯台で鍵を見せながら告白するとか、夕日の沈む伊勢湾を望む丘で告白するとかいろいろあった。

 その中で3位に入ったのが日本福祉大学北数百メートルにある、耳慣れない「恋の水神社」だった。僕が毎回、大学に通うコースの途中にあり、裏さびれた誰も近付かないような神社だった。学生に言わせると、ここへ日が落ちた後に行って告白するとまず間違いなく彼女を落とせるという。車1台も駐車できそうにない、汚くて忘れられたような神社だった。そりゃ、そうだろう、こんな場所に日が暮れてから、男子学生に同行する女の子なら、好きだからついてきたのだろうから、と思ったものだ。だが面白かったのは、昼でも何時でもいいがもう一度お参りに行くとまず二人は別れることになるのだという。別れの言葉は必要なく、ここへ行けば暗黙のお別れの合図となるというのだ。

 この話の20年後(僕は退職している)、何気なしに愛知県観光協会の出す公式ガイド集を見ていたらここの神社が取り上げられていた。なんでも大和国三輪山の大神のお告げでここの水は万病に効き、延命の神水でもあるという。又平安時代の「桜姫の悲恋物語」の中に次のように記してあるという。恋人の病に効く水を求めて桜姫がこの地を目指すが、途中で力尽きて亡くなってしまう、と。ここから「恋の水」の名前が来たのだろう。僕のゼミ生が調べた折には、このことが分からなかった。

恋の水神社
 ところがこの神社、今では数台分の駐車場が完備され、ここで紙コップを購入し、恋の願い事を書いて桜姫の石碑の前に供えれば恋が成就するというのだ。このストーリーを作ったのは誰だろうか。僕のゼミ学生の創った新聞を見て、学生の誰かがこんな話にしたのか。いや、金儲け好きな妖怪かもしれない。二度拝みに来ると分かれるとは今はどこにも記してない。かつて僕が教えていた20数年前には、駐車場はおろか、桜姫の石碑もなければ、紙コップに願い事云々なんてものも全くなかった。「恋の水神社」という名称と恋愛中のカップルを引き付けるアイデアが多いに当たったわけだ。
写真右:恋の水神社内の桜姫の石碑と水の入った紙コップ

 僕の描いた「妖怪 恋の水」は二人いて求愛成功と破局のそれぞれの役目を担っているキューピッドだ。欲望や邪心を心に抱いた男女が上辺はにこやかな風を装って(おかめとひょっとこのお面をかぶって)神社にやって来る。彼らの運命はキューピッドの意のままだ。


㉟「妖怪 恋の水」
 
妖怪恋の水


㊱「東山一反木綿」
出現場所:東山動植物園から星が丘に抜ける車道


 今から50年程前に、東山動植物園の裏辺りから山を越え、星が丘駅に抜ける車道が出来上がった当時、その途中で幽霊が出るという噂がたびたびマスコミに取り上げられていた。通り抜けの道ができるまでは雑木林の小高い山で道もなく、自殺者が多いと言われた場所だった。

 幽霊の目撃者によると、突然白い布をなびかせた幽霊が現れるという。その際、サイドミラーを見ると指が張り付いていたともいう。布がなびくというと一反木綿を連想する。10m程の白い木綿の布がどこからともなく飛んで来て人間にかぶさるというあの妖怪だ。水木しげるの「ゲゲゲの鬼太郎」で紹介され、特に知られるようになった。三河湾に浮かぶ佐久島では同じような妖怪を蒲団かぶせという。鹿児島方面では一反木綿だ。蒲団かぶせは田舎のイメージが強く語呂が良くない。だから水木しげるも一反木綿を使ったのかもしれない。

 50年程前と言えば、ちょうど僕が初めて車を買って乗り始めた頃で、僕は恐る恐るこの通り抜け道にチャレンジしたことがある。街灯も何もない真っ暗な一方通行の一本道を進んでいくと、幽霊が出ると言われている場所になる。突然、何かが唸るような音、思わずハンドルを握りしめ、一目散に上り坂を進み、丘の上まで来て下を見ると超きれいな街の明かりが飛び込んできて、フゥーと一安心。このような落差が人に幽霊や妖怪を連想させるのかもしれない。緩やかなカーブとアップダウンがある一方通行のどこまでも続く一本道は暴走族の格好のレースコースになったこともある。

パプアニューギニアで
 実は唸るような音とは夜の動物園の方から聞こえる動物の鳴き声だった。後にパプアニューギニアの一人旅のホテルでも、ジャングルの方角からの異様な動物の叫び声が聞こえ、東山の自動車道を思い出した。さらに宿からはジャングルへ頻繁に落ちる雷の稲妻が光り、これ又丘の上から見た名古屋の街の明かりに重なった。またこの時はギャング(ラスカル)に襲われそうになり、部屋のドアにテーブルなどでバリケードを作り必死に抑えてギャングの侵入を防いだ恐怖の夜でもあった。水木さんもパプアニューギニアで原初的な体験をしたことで、より妖怪に惹きつけられたのかもしれない。
写真右:パプアニューギニアの奥地で酋長に会い、ペニスケースをもらった

 一反木綿は人にかぶさり、窒息させる妖怪といわれているが、今回、僕の描く「東山一反木綿」はキリンやカバにもかぶさり、さらに僕の車にもかぶさっている。その長い木綿の先は幽霊になっている。不思議な指が覗いている。ひょっとしたら50年前のあの時僕は一反木綿がかぶさって事故死していたかもしれない。


㊱「東山一反木綿」

東山一反木綿
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

カウンター(since2011.1.1)
プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR