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『名古屋妖怪三十六景』より㉝㉞

『名古屋妖怪三十六景』より㉝㉞


㉝妖怪「ケケ観音」(禿げ観音)
出現場所:愛知県高浜市かわら美術館界隈


観音衣浦 (270x270)
 高浜市のかわら美術館裏に小山があって、その上には陶製の高さ6メートルに及ぶ大観音像が祭られている。名称を衣浦観音と言い陶製では日本最大だという。
写真右:小山にそびえる衣浦観音

 20年以上前の話になるが、かわら美術館の帰り、この観音が気になって小山を登ってみた。すると中年でピシッとスーツを決めた男性が観音様に向かってしきりとお祈りをしていた。目が合ったから挨拶代わりに「この観音、どんなご利益があるのですか」と尋ねてみた。「よくは分かりませんが、ここはかわらの町だから髪の毛に効くらしいですよ」と軽く答えてくれた。「はぁ?」丘を下る彼を見たら頭のてっぺんが薄く円盤禿になりそうだった。そうか!頭髪と屋根瓦、互いに人と家のてっぺんにある、なるほどと思った。だから先ほどの男性はお参りしてたのだ。

 禿に効く観音なんて日本中どこにもないのでは。ここを拝めば禿が止まる。これはすごい。いずれ有名になり、すぐ下にあるかわら美術館も見学者が増えるに違いない。
 ここ高浜は瓦シェアー日本一の三州瓦の産地で、街中には鬼瓦がいっぱいだ。馬を使ったおまんと祭りでも知られる。無形民俗文化財で人馬一体となって駆けまわる勇壮なお祭りは有名だ。かわら美術館は瓦の収集で有名だが、それプラス、頭髪に関する世界中の資料や絵画作品を集めたらどうだろうか。

 この禿げ観音は髪の悩みを抱える人を救う妖怪と言ってもいい。でもそんな優しい妖怪に禿げ観音なんて名前はちょっと失礼だから「ケケ観音」と呼ぶことにした。僕の今回の妖怪画では、ケケ観音が鬼瓦の兜をかぶり、勇ましくおまんとの馬に乗っている。馬の脚は円盤禿のカッパを踏ん付けている。
「山彊先生は今年、80になるそうだけれど髪の毛を維持してますか?」。ハイ、妖怪「ケケ観音」のせいなのか、この小山に登って以来、ほとんど頭髪は抜けていません。


㉝妖怪「ケケ観音」

妖怪ケケ観音


㉞神様妖怪『猩々』(しょうじょう)
出現場所:名古屋市 鳴海、笠寺方面


 秋になるとマスコミを賑わすお祭りがある。鳴海八幡宮祭や七所神社例大祭だ。両祭りとも猩々が現れることで知られる。猩々は古代中国の想像上の動物で妖怪のようなものである。全体像としては人間と類人猿が合体したような感じだ。特徴は朱色の髪に覆われ人語を解し、子供の泣き声のような声で話しお酒を好む大男だという。

 この話をベースにして江戸時代の元禄や文化文政の頃、この東海道の宿場町にもこれを真似たような妖怪が登場してきたようだ。きっとこの町に僕のような出好きな画家がいて祭りをより面白くしてやれとして創り出したのではないか。

鳴海祭礼図より
 文献としては1757年の尾張地区の祭礼を集めた「尾陽村々祭礼集」の鳴海のところに,猩々が行列に並んでいたと記されている。あの尾張藩士で北斎の大ダルマ絵を記録したことで知られる高力猿洪庵が、1778年にこの村の祭りに来て書いた「鳴海祭礼図」にも登場している。
写真右:高力の「鳴海祭礼図」(中嶋町の猩々)
 この年は高力が日記を書き始めた頃だから、面白いことを書きたくてしょうがないので見学に来たのだろう。妖怪画の多い北斎はこの年、まだ19歳で彫師から絵師に転向したばかりだった。世の中が安定し、人々の暮らしが豊かになると変わったこと、面白いこと、怖いことに目が行くようになるのだろう。

 お祭りの猩々は手形の竿を持って子供らを追いかけお尻を叩く。子供らはキャーキャー騒ぐが叩かれることによって1年間の無病息災を得ることができると言われる。

 僕の描く猩々は赤い顔や手、赤っぽい体毛で全身を覆われ、手形の竿を持って子供達を追いかける。子供は猩々の好きなお酒と草履を持って妖怪をからかう。草履が好きなのは靴フェチと同じなのだろうか。世の中が落ち着くといろんなフェチも表に出てくるものらしい。気にいらないのは猿洪庵の絵もそうだが、実際僕が猩々の現れるお祭りを見て回った感想として、猩々の顔がへちゃけてまるで迫力がないこと。顔を修正すれば全国区の妖怪になれるが。そう思って僕の創り出した妖怪は、子供もびっくりするような猛々しい妖怪にしてみた。


㉞神様妖怪『猩々』(しょうじょう)

神様妖怪猩々
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プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

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