アレクサ・ミードと森村泰昌

アレクサ・ミードと森村泰昌
(米国と日本の国民性)

 先日、妻の教え子である米国の若い夫婦が我が家を訪ね、夕食も共にした。彼等は高校時代から同棲を始め大学を出て結婚をし、その後二人そろって日本へやってきた。日本で外国人講師として英語を教えながら4年間暮らし、この春、米国に帰るため送別会を兼ねた夕食会を開いたのである。
 美術関係のことに話題が移った時に、夫の方が「今、アメリカで一番知られている芸術家です」と言って、スマホでその作家の作品の映像を見せてくれた。見るなり僕は「しまった!アートにこの方法がまだあったのか」と、このアイデアに気付かなかった自分への後悔しきりだった。アートが終わったと言われる今の時代、どんな作品を作ろうとも虚しい感覚に襲われる事が多い中でのことだった。これは僕以外の絵描きでも中年以上のアーティストが見れば同じような思いを抱くに違いない。その作品は、対象をキャンバスに絵具で描くこれまでの絵画とは逆で、その描く人や物に直接絵を塗ってしまうものだった。作者アレクサ・ミードは、まず描くモノそのものに絵具を塗り込み、それを写真に撮り会場に飾る。一見油絵作品に見えるがそれは直接描いたものを写した写真なのだ。分かりやすく述べれば、モデルの顔に絵の具を塗り、それを写真に撮った作品なのだ。
モデルに色付けミードの写真作品
 写真左:ミードがモデルに色付けをしているところ   写真右:ミードの写真作品2009年作
 ミードは1986年、ワシントンD.C.生まれの女性。2008年オバマ(大統領)の選挙キャンペーンの取材班で活躍。その翌年、美術大学も出ておらず、アーティストでもないのに新しいアートのアイデアに気付いて、9カ月に渡って作品を制作して発表する。それが2年目には米国で最も注目を集める画家としてインターネットで紹介される。そして我が家へ来た米国人のようにスマホに入れて持ち歩かれるようになる。米国人のその頭の柔らかさは尊敬に値する。常に芸術思考、創造的思考を抱かえ日々生活しているのだろう。我が家へ来た彼も芸術家ではないが、生きる上では常に芸術家なのだ。だからおもしろく感じるのだ。日本人にはこの感覚・感性はない。習った法則が頭に埋め込まれていて、そこから逸脱したら感知できないのだ。これでは生きることを楽しめない。
 二人とも、日本に来て一般家庭の和食を食べるのは初めてだと言っていた。話の中で、米国に帰ってからどうするのか尋ねてみた。二人はまず彼女が大学院に入って、これから生涯をかけてやる仕事、教育学の勉強をするという。その間、夫はアルバイトで彼女を支える。二年後、こんどは夫が考古学の研究で大学院に行き、彼女がバイトで支える。それぞれの院生活が終わったところで仕事を探し、子作りもするという。同棲をして性願望は早めに済ませておいて、じっくり生き方を考える。僕はすごく納得した。
 日本人は性願望を満たすためにまず結婚する。いい相手を得るために学歴で箔をつけ、将来も約束された仕事場に入る。その後結婚し、子作りもする。その後は気力も薄れ、子供中心の生活で、自分のやりたいことなんて後回しになる。あとは定年後の趣味しかない。要は米国のような自分探しの生き方をしていないのだ。「山彊先生、それは昔の先生の世代のお話。今はまったく違うわよ」と学生に言われそうだが。

 ところでこのアレクサ・ミードの作品作り、ヒントは日本で有名な画家、森村泰昌からもらったのではないかと思われる。森村の作品は1980年代から始まり、自分を有名作品のモデルに変装させ、写真に収まるものだ。例えばモナ・リザなら自分が化粧をしてモナ・リザそっくりになり写真に収まると言ったものだ。
ゴッホ自画像森村泰昌ゴッホの絵に収まった自分
写真左:ゴッホ作「包帯を巻きパイプをふかす自画像」1889年作  写真右:森村泰昌作「ゴッホの絵に収まった自分」(写真)1985年作
日本ではまあ有名だが、ミードのように一般人にまで知れわたることはない。日本人は彼の作品をどうとらえるか、迷っている。と言うよりこのおもしろさを理解できる教育を受けていないのだ。
学生が言うように若い子たちの生き方が変わって、いい意味での米国的の考え方が浸透すれば、各人にあった生きがいもできる。そうなれば森村の作品も一般に受け入れられるようになるかもしれない。



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プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

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