魚が閉じ込められた氷上を滑る 北九州スケートリンク事件

魚が閉じ込められた氷上を滑る 
北九州スケートリンク事件

魚の氷漬けリンク
 最近、5000匹の魚を氷の中に入れた北九州市のスケートリンクの企画が一部の人々の反対にあって中止になるという出来事があった。
写真右:氷の中に魚を入れてリンクを作る作業中の写真
「子供たちへの教育上、残酷で悪い影響を与える」というのがその理由らしい。確かに魚を氷に閉じ込めるというと、人間などを生き埋めにするようなイメージがあり、残酷だという発想につながったのかもしれない。また「生き物の上を滑るのはそのものに対する軽視にならないか」という意味合いもあったようだ。実際はもちろん魚市場で廃棄処分される寸前の魚を使ったとのことで、子供たちに水族館の気分をスケートリンクでも味わってもらいたいというサービス精神からでた行為だろう。

魚氷
 僕としては、氷に魚を閉じ込めその上を滑る行為を知った当初、「アート的で面白い」「このアイデアはアート界のオリンピックと言われるベニスビエンナーレ展のような世界の美術展にも使える」と思ったものだ。
 皆さんお馴染みの「さっぽろ雪まつり」では氷の壁を作りその中に蟹や海老、鯛等の魚を入れて水族館のように展示している。
写真左:さっぽろ雪まつりで人気の魚氷
これがすすきの会場の目玉でもあり、もう33回も続いている。こちらは見るだけで滑らないからいいのだろうか。
 
活け造り
 動物愛護団体等の言う「残酷だ」というのは何をもって言うのだろう。生きている牛を興奮させ、殺していく闘牛は残酷だろう。では料理屋へ行って食べる海老や鯛等の活け造り(写真右)はどうだろう。まだ完全には死んでおらず、ぴくぴく動いている魚を鮮度抜群だと言って食べるのは?彼らは活け魚料理を食べることには反対しないのだろうか。

 中学校の理科の授業では蛙や鮒の解剖実験がある。(近年では都市化が進み子供たちで蛙等確保するのが難しいことや親たちの反対、先生自身の裁量等でやっていない学校が多いようだ)麻酔で蛙を半殺しにし、腹を切って内臓の位置や赤い血管やぴくぴく動く心臓や肺を観察するものだ。これも完全廃止にすべきだろうか。ある学校では子供たちが捕まえた蛙に愛情が湧き、解剖の前には全員が手を合わせ、解剖後は泣いたと聞く。命の授業が行われたのだ。

 魚は食料でもあり、生物として鑑賞の対象にもなる。水族館では生きた魚類が、美術館でも魚類は絵の題材として描かれている。氷の中に魚がいれば、滑りながら理科の観察や美術鑑賞ができる。スーパーで購入した食べる部分だけ切り取った魚しか知らない子供たちにとって驚きの発見があり、自然を知る勉強になるのではないだろうか。

 ともあれ北九州のスケート場は批判を受けてこの企画を中止した。「こうなってしまった場合、山彊先生が担当者だったら、どうしますか」。僕なら転んでもただでは起きない精神で次の手を考えるね。「魚を撤去します。ほしい方は氷を割って自由に持っていってください。魚は凍らせてあるから火を入れれば食べてもイイですよ」と呼びかけるね。子供たちの大人気になって、スケートリンクのPRにもなる。それに一部は切り取って魚の入った壁としてスケートリンクの目玉とするね。まさに氷の水族館だ。えさ代もいらないし、水替えもしなくていい。これは札幌の雪まつりと同じ発想だ。人々の考え方は千差万別だから賛否両論が出るのは当然のこととして企画者は対処すべきなんだろう。

 ところで2年前、愛知県美術館に出されたペニスの見える有名写真家の作品に卑猥だと文句を言った観客がいて、県警は撤去を命じた。その作家は反発してその部分にカーテンをかぶせて出品をつづけた。その1年後、大阪の美術館でも同じような作品が展示された。こちらは有名な画家森村泰昌のペニスの映った写真だ。けれど大阪市民は誰もいちゃもんをつけなかった。

写真下左:愛知県美術館の男性裸体写真に関する記事  
写真下右:森村泰昌本人の裸体写真作品

裸写真作品の記事 森村自身の裸像写真

 裏話だが愛知県美術館では、このことが新聞に報じられたおかげで入場者が増えたと言って関係者は大喜びであったとか。この事件に関するするもう一つの裏話は、この作品の撤去を命じた警察署の所長は僕のかつての教え子だったことだ。もしこの事件が話題となって入場者が増えることを先読みして彼が命令を出していたとしたら、僕の美術教育もまんざらではないかもしれない。何はともあれ名古屋は大阪と違って新しいことに挑戦しようという気運が少ない。

 だいぶ以前の話になるが東京の週刊ポストから僕に取材があった。「名古屋地区は何故観覧車ばかり作るのか。刈谷にも名古屋港にも、また栄のど真ん中にも・・。」僕は次のように回答した。「名古屋人は気が小さい。余分なことをせず、じっとしていれば首にならなくていい。観覧車設置は誰でもが考えつくことでコストもあまりかからない、だから万一失敗しても、叱られることはあまりない。変わったこと、大きな企画をして失敗したら首になる。だったら変わったこと新しいことをしないことだ」
 
写真下左:僕のコメントが載った週刊ポスト  
写真下右:名古屋地区の観覧車の写真と下に書かれた僕のコメント

僕のコメントが載った週刊ポスト 観覧車と僕のコメント

 そして名古屋はだんだん魅力をなくし、今では日本で一番行きたくない街となった。魚の氷漬けスケートリンクの話からこんなことを僕は連想していた。



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プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

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