妖怪インニューヨーク展 ギャラリートーク

妖怪インニューヨーク展 
ギャラリートーク


日本クラブ所在地
 僕の個展をすることになっているニューヨークの日本クラブから「妖怪画個展の期間中に妖怪の講演をしてくれませんか。アメリカでも今年から“妖怪ウオッチ”が始まり、皆さん興味を持ってみえます。どうでしょう?」と言われ、おしゃべり好きな僕は個展会期中に講演もすることにした。
写真右:日本クラブ所在地、カーネギーホールの北、赤い矢印

 しばらくして担当者から「通訳はどうしましょう。ひょっとして先生の奥様にやって頂けるとありがたいのですが」と連絡が入った。以前係りの人にメール連絡は英語でもいいですよ。妻が訳してくれますから」と言ったことを覚えてみえたらしい。僕はすでに一人で行くための航空チケットも安宿も抑えてある。けれど妻とのコラボも悪くないなと思い、旅行嫌いの彼女に頭を下げて頼むことにした。ホテルは僕一人と思って安いところに決めてあったので、もっといいホテルに変えようかと言ったら「別に安宿でもかまわない。旅行そのものが嫌なのであって、高級ホテルに変えたからといってそれで気が変わることはない。どうせ行くなら普通じゃない旅行の方がいい」と言われた。

 僕のいつもの少しエロい講演話を妻はどう訳すだろう。英語のジョークは難しいと妻がいっていたから、真面目になってしまったらつまらないな、なんて考えている。
 講演で話すだいたいの内容を下に書いてみたのでよかったら読んで頂きたい。これを読んでもらえば皆さんにも僕が意味する妖怪についてより分かってもらえると思う。「日本で今、騒がれている妖怪は簡単に言えば水木しげる妖怪なんだよね」と妖怪研究者たちが言っている。日本人にはこれで理解してもらえるが、水木しげるを知らないアメリカ人には理解不能だろう。このあたりも頭に入れて講演原稿を読んで頂けると有り難い。
 講演の最後にはいつも僕が名古屋の講演でやっているようにお土産付きのクイズをやるつもりだ(名古屋人はお土産をすごく喜ぶ)。正解者には鬼の面等をあげたりるつもりだ。クイズは、例えば「名古屋について知っていることを挙げてください」のようなものだが、きっと名古屋について知ってる人はごく少ないと思う。しかし当日会場には、名古屋のおもてなし武将隊が応援にきてくれているから「サムライ」とか「武将隊」と言えば当たりにするつもりだ。
 武将隊はハロウィーンに参加する予定がある。その折僕たち8人程はそれを盛り上げるため全員が赤い着物を着て緑色のかつらをかぶり、全員が人間と等身大の気持ち悪い人形を竿に掲げ武将隊の先導をするつもりだ。ニューヨークは何でもできて、何が起こるか分からないから芸術家たちにとってはおもしろい。


講演内容
 こんにちは。日本の名古屋から来た山田彊一です。僕は今日妖怪についての話をします。妖怪を英語にするとゴーストとか、モンスターとなりますが、そこから皆さんは例えばどんな妖怪を想像しますか。ここアメリカの妖怪なら、ゾンビやバンパイヤー、狼男などかと思います。日本でも一つ目小僧とかのっぺらぼうとか昔から語られてきた妖怪がいろいろいます。でも僕が考える妖怪はアメリカの妖怪とも、日本の古い妖怪ともちょっと違います。どこが違うのかを今から話したいと思います。

 僕はある時妖怪を研究している人々に出会いました。初めは彼らの話を聞いて興味を持ったのですが、話していくうちに、何か違和感を覚えました。彼らは昔から人々の間でよく知られた伝統的な妖怪について研究しているのです。例えば日本で有名なろくろ首はいつごろから現れたか、どの地方に現れたかなど文献を調べ語り合っているのです。でもそもそも妖怪は誰が創りだしたのでしょう。勿論神ではなく人間です。妖怪は人間の恐怖や驚き、怒りや恨みが生み出した幻想の生き物です。実際には存在しない非科学的なものです。僕はアーティストです。アーティストは常に新しいものを創り出していくべきです。古いもの、しかも根拠のないものをあれこれ調べるのは性にあいません。そこで僕は誰も見たことがない、聞いたことがない新しい僕独自の妖怪を自分で作ろうと思いました。昔の人がしたように僕も妖怪のクリエイターになろうと思ったのです。

 まずは手始めに自分の生まれた名古屋とその周辺を調べ、妖怪を創り出していきました。ここで注意しておきたいのは、どんなものが妖怪になるかということです。僕にとっては何か不可思議なもの、奇怪で風変わりなものは全て妖怪になりうるのです。ですから人間、動物、建造物などすべて妖怪にしてしまいました。そしてそれらをまとめて本『名古屋力・妖怪篇』を出版しました。同時に本の中に挿絵として僕が創った妖怪の絵も描きました。

 その後2014年僕は展覧会をするためにニューヨークへ来ました。この展覧会は妖怪とは関係のないものでしたが、その時僕はこの街の魅力に取りつかれ、同時にこの街でも妖怪にしたいものが沢山あることに気付いたのです。
そこで翌年再びニューヨークを訪れ、朝から晩まで歩きまわり不思議なものや変わったものを見、また再びそれを本にして『妖怪インニューヨーク』というタイトルで出版しました。そして前回と同様、見つけた妖怪を絵にしました。今回ここに展示してあるのはそれらの中から選んだ30点です。

眠れる自然史博物館の恐竜
 先にも言ったように僕は人間、動物、建造物等何でも妖怪にしてしまいます。もうすでにみた方は分かると思いますが、ブルックリン橋、自由の女神像、アメリカ自然史博物館、グランドセントラル駅などは建造物、ウォーホル、マリリン・モンロー、マーク・トウェインなどは人間、ライオン、フクロウ、ネズミなどは動物です。それぞれのものに関連する話などからイメージを膨らませ、妖怪に作り上げました。写真右:眠れる自然史博物館の恐竜

 普通妖怪と言うと怖くで、不気味なイメージのものが多いのですが、僕の描く妖怪はどこかコミカルでユーモアのある妖怪が特徴的です。人々からは僕の性格が現れているのだと言われたりもします。
 僕の妖怪とそれ以外の妖怪の違いが分かって頂けたでしょうか。要するに僕の妖怪は全て新しいオリジナルなもので他のどこにも見られなく、ユーモアのある楽しい妖怪だということです。僕は自分が最新の妖怪クリエイターだと思っています。

 さて前にも言いましたが、日本では昔から様々な人が妖怪を創り出してきました。調べてみるとそれらはほとんどが平安時代(10Ⅽ~12Ⅽ)か江戸の文化文政(18Ⅽ~19Ⅽ)に創られています。何故この時代に創られたのでしょうか。それは世の中が平和で穏やかだったからです。僕の持論は「平和な時代には妖怪が現れる」というものです。平和で周囲に心配事が少なくなると人は自分で心配事や恐怖を創ってしまうものです。

マンハッタン雲もキャット
 ここで僕の妖怪がどのようにして生まれたのかということを2,3の例とともにお話ししたいと思います。
日本の妖怪の一つに猫又と呼ばれるものがあります。猫は一般的な寿命10年以上生きると尾が二つに分かれた妖怪になるという伝説があります。日本の有名な漫画「犬夜叉」、やアニメ「妖怪ウオッチ」には二股の尾の妖怪猫が登場します。とくに「犬夜叉」の妖怪猫はキララという名です。キララは日本語で雲母とも言います。調べていくとマンハッタンは雲母の1枚岩(英語ではマイカ・シスト)でできているということを知り、それからヒントを得て「マンハッタン雲母キャット」という作品(写真左)を創りました。

 何故妖怪になると尾が2本になるのでしょう。本来一本のものを二本にすると人はそこに妖怪性を感じるのです。ギリシャ神話にセイレン(英語ではサイレン)と言う尾が二本になったお化け人魚の妖怪が登場します。最初上半身が人間で下半身が鳥だったのが魚に変わっていったと言われ、船人を美しい声で誘い遭難させたと言われています。

 コーヒーのスターバックスのロゴも尾が二本に分かれた人魚です。美しい声ならぬおいしそうなコーヒーの香りに誘われて人々が店に入ることを狙ったのかもしれません。
ロックフェラー666人魚
 実はロックフェラーセンターの東側にも3メートルほどの尾が二股に分かれた人魚の彫刻があります。始め見た時は単なる人魚の彫刻だと思っていたのですが、よく見たら尾が二つに分かれていました。いろいろな偶然の発見がありました。ニューヨークへ来る人は知らぬ間に引き寄せられてしまうのでしょう。僕もニューヨークへ来る度にまずロックフェラーセンターのセイレン像の前に着て、塔を見上げたり、クリスマスツリーを眺めて、来られたことに感謝します。そんなことから「妖怪・ロックフェラー666人魚」という妖怪作品(写真右)を創り出しました。

妖怪自由の女神メデューサ
 また僕がニューヨークに来ていつも気になるのは、二ュ-ヨークの湾の入り口に立つ「自由の女神」です。日本では女神と訳していますが、英語では自由の像(The Statue of Liberty)なので男とも女とも言っていません。でも日本語訳の影響で女と思っていたのですが、見れば見るほど女性らしくない。腰が太く、もし女とすると男勝りの妖怪のような力を持った女ではないかということです。そこから女性で妖怪に一番近い人間、あの蛇の髪の毛を持ち目が合うと石にしてしまうメデューサを連想しました。
 メデューサはギリシャ・ローマ時代神殿の入り口の柱に彫られていたと言います。これで侵入する悪魔を追い払う守護神の役目をしていたのです。こんな考えで僕は自由の女神はメデューサだと思っています。建設に携わった者がフリーメイソンのメンバーで、フリーメイソンの崇拝する魔女がメデューサだからとも言われていますがそれはまあ一種の都市伝説みたいなものだと思います。やはりニューヨークの海の玄関口を守る守護神としてこの像は建てられていると思い、妖怪メデューサ女神という作品(写真上)を描きました。
それぞれの妖怪がどんな意味を持って描かれたのか詳しくは僕の本『妖怪インニューヨーク』に書かれています。

 こんなわけで妖怪の本場、日本からやってきた僕は、ニューヨークでポケモンGOのように妖怪ゲッターとなり、30匹の妖怪をゲットし、絵に描きましたが100年後、どれが残るでしょうか。ニューヨークの皆さんがそうだ、そのとおりだと思っていただければ妖怪として定着します。

 また皆さんも妖怪を作ってください。「そんなことできる筈がないがね」と思われるかもしれません。それは違います。
日本に『口裂け女』という有名な妖怪がいます。これはまだ20年~30年前、できたばかりです。岐阜の田舎のおばあさんが孫娘の帰りが遅いことを心配して「遅くなると口が裂けた怖い女が出るよ」と孫娘に言ったそうです。孫娘はそのことを友人に話し、その何でもない話を地方の記者が小さな記事として取り上げました。その小さな記事を東京の週刊誌が面白がって大きくネタとして取り上げました。これが妖怪話として定着してしまいました。今では日本中知らない人がいないくらい有名な妖怪です。このように皆さんも妖怪を創ることができるし、また皆さん自身が妖怪になることも可能なんです。


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プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

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