中国の現代アートが今世界一である理由

中国の現代アートが今世界一である理由

 中国の現代美術に関して、1980年代は「中国ルネッサンスの始まり」とか「エコールドパリならぬエコールド北京の時代だった」とも称されている。
世界の現代美術史の大きな流れを見ると第2次大戦までアートの中心はパリであった。日本からも多くの画家たちがこぞって芸術の都パリへ出かけたのは周知の事実である。大戦後疲弊したヨーロッパから経済の中心はアメリカに移った。アートはそのアメリカでも最初は、伝統的なヨーロッパの絵画こそが真の芸術だと考えられたため、金持ちたちはヨーロッパの有名画家の作品収集を始めた。けれど途中からアメリカ人財閥やエリートはそれは間違いだと考え始めた。
 「ヨーロッパの絵を買うことは、せっかく稼いだお金を彼等にやるようなもの。何よりも現在世界一の経済力を誇るアメリカなのだから、アメリカ独自のアートを自分たちの手で育成したい」と。そして財閥と美術評論家が組んで新しいアートを興した。その一つが反芸術を掲げたポップアートだった。そこいらの広告をかき集めたようなものに始って、あらゆる種類のアートがあふれ、アメリカ現代美術が花開いた。ウォホール、ジョーンズ、リキテンシュタイン等アメリカのヒーローの登場だ。


中国偽アート
 21世紀の現在はその経済の中心が中国に移った。中国がなければアメリカも日本の経済も立ち行かなくなっている。1980年代、小平の「ネズミを捕る猫は白でも黒でもいい」という言葉から中国経済の発展は始まった。日常生活に余裕が出てくると中国人はアートの世界にも儲けられる領域があるとチャレンジしだした。文革等で抑えられてきたエネルギーは、一般の伝統的な洋画作品にあるような風景、静物などを描く方向に向かわず、毎日必死で稼いでいる人々、又大儲けによって刻々と表情が変わってゆく周囲の人々の顔を描くことに向かった。そのこともあって中国のアートはほとんど顔シリーズのように映る。そして愛国心教育の強い影響もあってか中国の金持ちは、作品を買うなら中国人のものにしようと、自国民のアートを狙い買い始めた。それは世界の美術オークションの世界も席巻し始めた。中国アートバブルである。そのバブルがはじけて798芸術村はゴーストタウンと化したというニュースを覚えている方もいるだろう。その後かつてほどの勢いはないが今では観光客用の美術地区として整備され生き残っている。

 「山彊先生、ではどうしてヨーロッパでも中国人の作品が売れるのですか」。中国は今からさらに大きく発展する。今はアートを買う余力はない人もいずれアートに目覚める。その時買った作品を大きく儲けて買い戻させればいいと踏んだのではないか。そういった買い手の需要にこたえて現在10人程のヒーロー画家が存在する。
 「そのヒーローは誰だか、どうすると分かりますか」。美術雑誌等は作家名が多すぎて絞りにくい。そこで北京の芸術区三里屯の市場にでも行けばいい。偽のビィトンやグッチのバッグと並んで中国を代表するアーティストの偽物油絵が数百枚積んで売られている。偽物の絵が出回るということは、有名画家であるという証しである。印刷コピーではなくキャンバスに正式に描いたものだ。ピカソやゴーギャンの偽物は売れないらしく全部が中国の画家たちだ。ここに出ている10人程の画家がこの国を代表する者たちだろう。売られているものが全て本物ならそれぞれ百万円以上する代物だ。生活に困った画家が、画家本人より達者に何枚も描いているから、タッチにスピード感があり本物より本物らしい作品となる。店屋のおやじは最初、1枚7000円程の値を言うがこぎれば1000円程にすることができる。僕も一番売れてるという画家の作品を3点、購入してきた。写真上:僕の家の玄関に飾ってある中国の偽アート。(本物だと数百万するがこれは1300円程)
 堂々と積んで売っているところを見ると、何所か違えて描いているのだろうか。「そんな偽物を堂々と売るなんてめちゃくちゃだがね」とあきれる人もいるだろう。偽物だと明示してそれで売れれば合法であり、文句を言う筋合いではないということだろう。中国でピカソやゴーギャン、セザンヌ等の偽物がなく、多分日本人ならほとんど知らない作家の作品が売れているのは、ピカソらよりも中国人作家の物の方が売れるからである。

話題の中国アート
「今、北京で売れている作品はどんな傾向のものですか。またこれから出てきそうなアートはどんな作風ですか」。短い滞在でどこまで観察できたか自信はないが、気付いたことは、中国もバブルは終わり、アートがあまり売れていないことだ。それでも画家たちが頑張るのは日本の10倍の民がいるからこれで終わらず、次があるだろうということだろう。写真左:今評価の高い北京の芸大の教授作品
 作家たちについて言えるのは頭のいい連中が画家になった者が多く、作品にものすごい思考が感じられることだ。かつてのアメリカは反芸術を唱えたどちらかといえばアナーキーな者が作品を創ったようだが、ここ中国は知能指数が相当高い連中が創り続けているような気がする。
高知能レベルの作品
 写真左:いずれ認められそうな知能レベルの高い作品    
 創造のアート以後の新しいアートに中国もまだ入っていないが、次なるアートは、いかなるアートが美術コレクターの眼にとまり巨額のお金を生み出すことができるかを感知する高知能思考アートと金儲け精神の中から生まれるのではないかとも思える。


 
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プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

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