YOKAI (妖怪) in New York 第32話 ハロウィンと妖怪

YOKAI (妖怪) in New York
第32話 ハロウィンと妖怪

 ニューヨークの妖怪についてブログを書いているが、ハロウィンにも触れたくなった。前にもほんの少し触れたことがあったが、今回はもう少し別の角度から考えてみたい。
 本来ハロウィンとは万聖節(キリスト教で毎年11月1日にあらゆる聖人を 記念する祝日)の前夜祭で、 秋の収穫を祝い、悪霊を追い出す祭りで、キリスト教の前に存在した古代のペイガ二ズム(異教、多神教の類)に基づくものだ。それがキリスト教の国にも浸透していき、最近ではさらにキリスト教を信じていない人々が多い国にも広がっている。

ジャックオーランタン
 「ジャック・オー・ランタン」(お化けかぼちゃ)(写真右)を作り玄関先等へ飾り、子供たちが「お菓子をくれなきや悪戯するぞ!」と言って練り歩く可愛らしい行為から、お化けに仮装して歩くものまでいろいろあるが、特に近頃は内容もおどろおどろしく変わりつつある。大人たちが参加するようになったからだ。そのきっかけはハロウィンの「ゾンビ・ウォーク」にあるようだ。これは2000年頃から始まり、ハロウィンとは直接的には関係のない行為だが、誰かが中に組み込んでしまったのだ。
 このゾンビ・ウォーク(英語ではzombie mob、zombie march)の始まりははっきりしないが、北米のカリフォルニアの都市ではないかと言われている。それがカナダのトロントで2003年から年中行事化している。今では世界各国で行われており、特に日本で爆発的にゾンビ・ウオークは広がっている。もともと宗教行事であるハロウィンだが、宗教に関係なく面白そうなもの、あるいは経済的効果がありそうなものは何でも取り入れる日本人気質が一役買っている。今ではハロウィンは日本ではアニメのコスプレ大会の様相を呈しており、ハロウィンと全然関係のない仮装もOKだ。渋谷のハロウィンは世界一面白いと去年テレビのニュースでインタビューされた外国人が語っていた。

写真下:様々な衣装でパレードする人々
ゾンビ・ウオーク
 ニューヨーク在住の僕の教え子の河口君が昨年のハロウィンの日(10月31日)に、子供たちとどのように過ごしたかのメールをくれた。
 「五ドル程で買ったお化けかぼちゃは、もう中をくりぬき顔形にしてベランダに置いてある。午後からは子供を連れてご近所や知り合い宅を、お菓子を求めて周る。子供の服装はとんがり帽子の魔女スタイル。このスタイルが気にいったのか夜にはマンハッタンに出かけようと彼女は言いだした。近くに日本クラブのある57STで地下鉄を降りタイムズスクエア方面に向かったが、その混雑と人々の異様なスタイルで娘はしばらくして帰ると言いだした。周囲はホラー映画のシーンのようでもあり、街がラクーンシティ(テレビゲームのバイオハザードに出てくるゾンビウィルスに犯された街)に変貌したような雰囲気になっていたのだ。口が裂けて舌が飛び出していたり、顔中血のりで覆われていたり、人々が抱く犬までがゾンビスタイルになっていた。ゾンビスタイルになったら、可愛い女の子や子供たちに近付いて脅すことも容認されていると人々は思いこんでいるようで、子供たちを脅して回る。そんなこともありゾンビ・ウォークの中心であるグラマシーパークまで行く予定が、引返すことになってしまった」と。

 ゾンビ・ウォークはどこかの企業がスポンサーになっているわけでなく、どこでもだれでも無料で参加できる行為だ。裏で妖怪か、妖怪もどきの芸術家が動いているかもしれないが、まあ自由に参加できるため英語の喋れない日本人でもただ歩くだけだから気軽に参加できる。

ハロウィンドッグパレード
 犬も仮装していると教えられたが、なんとここでは犬の仮装コンクールもあるのだ。「ハロウィン・ドッグパレード」と銘打ってトンプキンス・スクエア・パークで催されるとか。これを僕は見たことはないが耳にイヤリング用の大きな穴を開けたり、毛を剃って刺青したりと犬の人(犬)権などお構いなしであったという。この動物虐待に驚いたニューヨークの州議会は2014年6月18日に犬や猫たちのピアスや刺青を禁止したという。写真左:ニューヨークのビル群を背負って歩く犬

ニューヨークのハロウィングッズ店
 急激に大きくなりつつあるゾンビ・ウォーク行為に衣装を調達するのは大変で、街中では同じような変装を目にする。いずれもっと個性のある造形性の高いコスチュームが求められるかもしれない。そうなると芸術家の登場となり、売れなくなった芸術家が今後この作品を創ることで食いつなぐことができるのではとも思っている。
写真右:仮装用のグッズ(ハロウィンの仮装は不気味で恐ろしくなくてはならない。古代の人々は悪霊が地上に戻ってくるため、自分が人間であると襲われるかもしれないので魔女やゾンビ、ガイコツ等に変身するのだという。グッズもそんな物が中心に売られている。黒猫もよく登場するが、ケルト人は悪事をして死ぬと黒猫になると思っているとか。

 けれど心配することもある。交通事故や殺人鬼に出会った人の遺体が、死んで公園に転がっていても人々はハロウィンの作品と思って見逃してしまうのではないかということだ。
 この心配が当たった。2014年のハロウィンの2日前、ニューヨーク州のロングアイランドで首のない女性の遺体が転がっていた。けれど道行く人はハロウィンの造形物と思い誰も警察に通報しなかったという。犯人はその間に逃げきってしまった。この逆もあった。ガレージのシャッターに投身大の人形を挟ませトマトケチャップを周辺に垂らしておいたら、本当の出来事と勘違いし、道行く人が警察に通報してしまった。
 けれどこんな心配をよそに今やゾンビ・ウォークは世界に広がっている。仮装や仮面はそれをかぶることにより本来の自分から解放される。享楽を求めるのは人間の本能だろう。そしてそこでは美しいものから、醜悪なものが創り出される。

 僕の考えではアートと妖怪は同じ次元でもあると思う。どちらも同じ人間の内なる自分が創り出すものだからだ。つまり人間の感想や恐怖が芸術や妖怪を作り出している。日本でも終焉を迎えたと言われる印象派から始まった現代美術が、この行為に乗っかることで再生されるかもしれない。現代美術家である僕が妖怪にこだわるのも、そんなことに原因があるのだろうか。


<ニューヨークの妖怪シリーズ>

 さて今回も上記の話に因んだ僕のオリジナル妖怪画を紹介したい。

㉜ 『ニューヨークお化けかぼちゃ』
 
ニューヨークお化けかぼちゃ

 ハロウィンの時期になると窓際や玄関に橙色のかぼちゃが飾られる。ヨーロッパの北欧系の祭りというからムンク作の『叫び』を口代わりに入れてみた。またかぼちゃを地球にたとえて左隅にニューヨークの地図も入れてみた。
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

カウンター(since2011.1.1)
プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

最新記事
カテゴリ
最新コメント
月別アーカイブ
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR