YOKAI (妖怪) in New York 第29話 廃船空母の幽霊

YOKAI (妖怪) in New York
第29話 廃船空母の幽霊

幽霊船
 「ニューヨークのハドソン川には使えなくなった空母が放置され、中を見ることができる。中ではそこに存在しない女性の悲鳴が聞こえたり、男の幽霊を目撃したという証言もあるよ」という僕にとって願ってもない情報を得た。そんな幽霊船のような船が現代のニューヨークにあるのか、でもそんな船ならホームレスたちがたくさんいて、怖くて入れないかもなどとあれこれ考えた。しかしやっぱり是非行って中を見たい。
 でもその前にその怖さより、廃船という言葉からテレビで見た映画『カリブの海賊』に登場する幽霊船(写真右上)のイメージが頭をよぎった。ジョニー・デップが乗り込んで幽霊と戦うあの船だ。だが待てよ、あれは200~300年前の帆船でのお話、空母とは全然違うのではないかと思った。

メアリー・セレスト号
 また1872年に見つかったニューヨーク発で、大西洋を漂流する謎の無人船も連想したが、これも帆船であることに気が付いた。ニューヨークからイタリアのジェノバへ向かっていた全長31メートルのアメリカ船籍の船(メアリー・セレスト号)(写真左)から、船長をはじめ乗組員の10名ほどが忽然と居なくなってしまった。船には争った跡もなく積み荷や食料の蓄えも十分だった。だが救命ボートと経線儀だけがなくなっていたという話だ。コナンドイルがこの事件に触発されて『J・ハバクック・ジェフソンの遺書』という題の小説として書いたのでたくさんの人に知られることとなった。

軍艦島
 さらにこの空母の話でもう一つ連想したのは、世界遺産にしようという提言のある長崎の軍艦島(写真右)(戦艦土佐に似ているからこの名がつく)のようなものかとも。海底炭鉱の石炭を採取するため明治から昭和にかけて栄え、最盛期には5300人も住み今は廃墟になった小島のことだ。今では観光客が訪れるようになったほどだが、それでも幽霊が出そうな雰囲気で夜はまず怖くて近付けないと言われている。

イントレピッドと艦載機
 まあハドソン川の廃船空母も雰囲気はこれに近いに相違いないと勝手に想像して出かけた。だがこの廃船空母に行ってみて驚いた。この船はイントレピッドと言ってマンハッタン西86番桟橋に係留され、38000トン級の大きさで90から100の艦載機を乗せているという。
写真左:イントレピッドと甲板の艦載機
 噂とは全然違い、きれいに改装されていて、まるで新艦のようで実戦となればいつでも出動できそうに感じられた。女性の悲鳴とか男の幽霊の話は改装された2008年より前の話だったのかもしれない。船内はきれいに整備され廃船のイメージはなく幽霊の出そうな雰囲気も感じられなかった。

戦艦武蔵 だが歴史をさかのぼってみると第二次世界大戦の折、この空母から飛び立った戦闘機がレイテ沖海戦で日本軍の戦艦武蔵(写真右)を撃沈させている。武蔵には3千数百名の乗員がいて、生き残ったのは420名程というから3千名程の日本兵が亡くなったわけだ。これらの日本兵の亡霊がこのイントレピッドに取りつき、夜な夜な妖怪や幽霊となって現れるという可能性もなくはないわけだ。誰もいなくなり暗くなった船内を歩けば、3千の亡霊が襲ってくるかもしれない。

船内に貼られた日本の女優たちのプロマイド
 艦内を歩いて目についたのは船員たちの寝室に貼られていたプロマイドの数々(写真右)だ。なんと山田五十鈴や久我美子、水谷八重子、高峰秀子等当時の日本の女優達だ。アメリカ兵にとって敵国の日本をやっつけるのは当然の目標だが、日本女性も征服の対象としてのピンナップガールだったのだろう。女性の叫び声が聞かれるというのは、ひょっとして彼女たちの叫び声だったのだろうか。

イントレピッド操縦室
 しかしながらこの海戦によって空母イントレピッドや乗組員も日本軍にやられている。神風特攻隊に襲われ20名程の兵士が亡くなっているし、魚雷攻撃も受けている。それでも沈まないこの船を日本軍は幽霊空母と呼んでいたという。ということはこの空母には敵味方の亡霊がいることになる。亡くなっても敵味方に分かれ艦内を飛び交って戦っている亡霊の姿や叫び声が聞こえるのかもしれない。神風に狙われたという操縦室(写真左)は狭くて薄暗く、赤いランプがたくさんの亡霊たちを引き寄せているように感じられた。

 この空母はその後ベトナム戦争にも参加し、1967年11月に神奈川県の横須賀に寄港している。その折4人のアメリカ兵が脱走し、ベ平連の小田実たちが助け、スウェーデンに亡命させたことが、日本では大ニュースになった。4人は脱走兵だからもう国には帰れない筈だ。どうしているのだろう。
 
Rana kauffeldi
 ところで僕が2014年の12月にニューヨークに行った折、この船が拘留されている対岸で変わった黒い斑点が鮮やかな新種のカエル(写真右)が見つかったというニュースが数日前の新聞に載った。この頃はこの空母を調べに行きたいと思っていた頃で妙にこのニュースが気になった。神風特攻隊に殺されて亡くなった米兵たちの亡霊が空母イントレピッドに乗りうつって住みつき、役目を終えた空母とともにアメリカに帰還した。その後係留されているこのハドソン川の対岸にカエルに生まれ変わって住み着いたのではないかと僕は勝手に思った。このカエル、「Rana kauffeldi」と命名されたそうだ。Ranaはトノサマガエルと同じアカガエルの種でkauffeldiは発見者の名前に因んでいる。トノサマガエルと聞けば親しみもわいてくる。この新種のカエルには日本兵が生まれ変わったものも混ざっているかもしれない。


<ニューヨークの妖怪シリーズ>

 さて今回も上記の話に因んだ僕のオリジナル妖怪画を紹介したい。

㉙ 『イントレピッドガエル』
 
イントレピッドガエル

 マンハッタンの西、ハドソン川の対岸で見つかった体に黒い斑点のある新種のカエル。神風特攻機との戦いを今でも続けている。カエルの喉には航空母艦がある。戦後70年たった今も亡霊の戦いは続いているのか?

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プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

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