妖怪屋敷 第13弾 妖怪鼠バトル

妖怪屋敷 第13弾
我が家の天井裏に、教え子の美女が放つた妖怪ネズミ数十匹集合

露夜星口絵
 江戸時代の読本『霜夜星』(しもよのほし)の口絵に、葛飾北斎の描いたおびただしいネズミの妖怪絵がある。写真右:北斎の描いた『露夜星』の口絵 妖怪ネズミ
この作者は柳亭種彦で、裏切られた妻の夫への復讐劇だ。不倫され、虐待され、自殺に追い込まれた妻であるお沢は幽霊となって夫を襲う。彼女はおびただしい怨霊ネズミを自分の口から、夫の伊兵衛に吐きかける。ネズミは伊兵衛に食らいつく。またある時はヘビに化け、夫を襲う。幽霊は口からネズミを吐けないし、化けることもできない筈だが、化けられるから柳亭種彦は幽霊と妖怪の区別をしていなかったようだ。
 「山彊先生、もう一度聞きますが幽霊と妖怪とはどこがどう違うのですか」。いろんな見方があるが、僕はおかしな、現実に存在しない生き物を妖怪と呼んで、幽霊もその一部と位置づけて書き進めている。まあ一般には、「人間であったものが、人間の形をとって現われるのが幽霊だ」と言われる。だが、僕は納得していない。人間の体を半分に切って下を透明にすれば幽霊だが、下はそのままにして上を透明にすれば妖怪になるから、前述の幽霊の条件はやはり当てにならない。

マリリンモンロー 写真で挿入した映画『7年目の浮気』のマリリン・モンローを例にとって説明してみよう。上半身を使って下を ぼかしたのが幽霊で、下半身を使って上部をぼかしたのが妖怪になる。モンローは妖怪にも幽霊にもなるわけだ。
写真左:映画『7年目の浮気』から。モンローの上半身に尾をつけたら幽霊に、下半身に尾をつけたら妖怪になる。彼女の死因は自殺らしいから怨念があったはず。日本なら幽霊になっている。おっぱいのはみ出た幽霊、松井冬子が喜んで描きそうだ。
「とすると山彊先生、幽霊は子供を産めないが、妖怪は子を産めるということですか」。性的思考転換が素早いですね。幽霊は一般的には脚(下半身)が無いと言われているからそうなりますね。妖怪とベットシーン、いいかも。終わった後、ペニスが食いちぎられていたとか?! しかし口絵のお沢の霊は足があるから、やはり幽霊、妖怪のはっきりした区別は無かったのではと思う。

 さてどうして僕はネズミ話をしたか。実は5~6年前、我が妖怪屋敷にある日突然、数十匹のネズミがこつ然と現れ、天井裏で運動会を始めた。運動会というよりオリンピック大会といった方が当たっているかもしれない。もう寝られたものではない。この折、幽霊はネズミに変身できるとする北斎の上記の絵を思い出したのだ。僕にはお沢のような女はいないのでその点は安心だが。「山彊先生、本当にそうですか?」
 僕は直ぐチーズをぶら下げた昔からの定番のネズミ捕りをセットする。だが、捕まったのは2匹だけ。この2匹の捕獲でネズミたちは学習したらしくその後の捕獲はなし。そこで今度はチューピタ(ゴキブリホイホイのネズミ版)をセットする。1個で3匹引っかかったが全て子供ばかり。2度目からはもう効き目がない。もう我が家はパニック。頭にきた僕は猫いらず(ネズミの毒餌)を天井裏に振りまいた。少しだとまた学習されると思って、全匹が同時に食べられるよう大量に撒いたのだ。翌日から天井裏の騒ぎは無くなった。天井裏を覗いてもネズミの亡きがらもなく、何処か死に場所を求め去ったのであろうと安堵していた。ところが数日後僕の寝室が、料理屋の匂いで独占され始めた。最初は旅館の台所の匂いの様で旅行気分だわ、きっとネズミの小便の匂いだろう、これぐらいなら、オリンピック騒動よりましだと、自分に言い聞かせていた。
 ところが1週間後、部屋は生ごみの底で生活しているような匂いに独占されてきた。そこで気がついた。寝室の上には二階があり、寝室の天井と二階の床の中間には消音、保温効果のためにウレタン状のクッションの詰まった数センチの隙間があり、その中に数十匹のネズミが潜り込んで死んだようだったのだ。天井の一部を破って消臭缶を数個入れるが効き目は全然なし。ついに降参し、人間の方が部屋から逃げ出した。この日から1年間、この部屋は早く匂いが消えるように、家にいる時には開け放って風を通すだけとなり、妖怪ネズミに明け渡した。「どうして単なるネズミが妖怪ネズミに格上げされたのですか」。死んでからも人に何かをするのは妖怪だからだ。ネズミでなくて人間なら幽霊というべきか。
蛍光灯
 1年半後の冬、悪臭も消え、そろそろいいだろうと暖房をして寝室で寝るようになった春、部屋中にダニが天井から落ち始め、次には少し大きめのブヨが閉め切った部屋なのに次々出現しはじめた。こんな大きな虫が通る穴は無く、また僕はパニックになる。1ヶ月後ブヨの発生場所と通り道が分かった。冬に温められた天井裏のネズミの死体に虫が湧き(これは推測だが)、天井に取り付けてある蛍光灯の器具内部にコード線の隙間から入り込み、そこで成虫に孵り、照明器具の中から次々と出て来たらしい。ぞぞっ!まさしく妖怪屋敷!
写真上:寝室(元第2アトリエ)の蛍光灯。この中で成虫になった?天井にペンキを塗っていて発見。
 このネズミ、実は僕の金城学院大学の学生である伏木さん宅にいたものだった。ネズミ騒動から2年後、大学の最初の授業でそれぞれの学生に自己紹介を兼ねて自分の家やその付近のことなどを話させた。そのおり「うちには倉庫兼大きな家があったけれど壊して建て直し、貸しマンションと自宅を建てた。そのためたくさんいたネズミがいなくなって、快適に暮らせるようになった」と話してくれた。「伏木さん、あなたどこに住んでるの?」。「徳川園のすぐ北側の…」。ええっ?僕の家のすぐ東じゃない。あの段ボール会社の娘さんなの?「先生、ひょっとしてルルちゃん(我が家の犬の名前)ちのお父さん!」。僕より犬の方が有名だったのだ。
 ネズミは建物の建て替えで彼女の家の倉庫から逃げだし我が家へ来たのだろう。東や南に逃げず西へ移動するのは何かあるのだろうか。これも我が家の妖怪の手はずによるものか。なかなか粋なことをやるものだ。何か不思議なえにしで全てが結ばれている気がする。

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プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

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