あいちトリエンナーレを検証する

あいちトリエンナーレを検証する
 
 あいちトリエンナーレが後半に入った。この現代美術の祭典が是か非か気になるところだ。半世紀以上現代美術に浸ってきた私としては「やっとこの地で現代美術が日の目を見た。けれど地方の保守アートの壁は崩せなかったのでは・・」というのが感想だ。というのもこの地の画家の参加が少ないために、盛り上がりがもう一歩という気がする。
 「瀬戸内海の現代美術展はうまくいっているのでは?」あれは私企業が主催しているが、愛知は行政主導。少しでも問題のある展示は避けねばならない。その結果他の美術展で既に展示された安全パイ作家の作品を展示することになる。もしこの地のディレクターを使ったなら、地元の作家との競合もでき、話題性もあり、仲間を動員できたのではと思うのだが。
 以前中日新聞が『中日展』を立ち上げ、その3回目から審査員として東京の著名評論家を加えることにした。その結果、地元と東京が混じり合い、人々の目が狭い名古屋から全国に広がり、大成功につながったという経緯があった。今回のトリエンナーレもこの延長戦上で出来るとよかった。私の教え子は今、名古屋の中学で英語を教えているので、ついでに「あいちトリエンナーレ」の知名度をクラスの生徒に尋ねてもらった。一人も知らなかったという。これはおかしい。デザイン博や愛知万博は強引と言える行政主導があり、それが功を奏していた。今回は無視。何か行政間で問題でもあったのだろうか。
 ドイツでも同じような展覧会、「ドクメンタ展」が行われている。ここでは駅を降りると大きな梯子を登る人体彫刻があって、もうドキドキするし、駅構内には特別展示室もある。名古屋駅を降りてもこの地でトリエンナーレ展が行われている雰囲気が皆無だ。ただ長者街を作品展示会場に使ったり卵型の派手なベロタクシーはヒットだった。3年後があったら期待したいが。


※上記の文は新聞報(9月22日発行)に載った私の文である。一般の人が読む新聞ということで優しくまとめさせていただいた。神田知事の引退宣言があり多分2回目はないであろうと言うことも意識して書いてみた。トリエンナーレのオープニングの日に神田知事から「山田さんも苦労したね。だから今があるのだよ。トリエンナーレをやる前、あなたの本『名古屋力・アート編』を読ませてもらったし・・」と声を掛けられると批判めいたことが言えなくなってしまう。
 「現代美術展をこの地でやったこと自体がすごいのだよ」と友人の美術館館長は言う。僧侶の友人は「なんだあれは、あんなものに10数億の金を使うな。あんた(山田)も相当儲けたのではないか」と言う。現代美術なら僕が裏で仕切り、いい目をしているのだろうと思い込んでいる。また「先日、瀬戸内海の現代美術展を観てきたがものすごい人だった。その盛況ぶりに恩恵を受けた住民たちは毎年開いてほしいと言っている。愛知はトリエンナーレに倍の予算を使っているのに住民たちのそのような要望は聞かれない。どうなっているのか」と、つい先日直島まで出かけたカルチャーの生徒さんに私は言われた。
 また連休で里帰りをしている私の娘にトリエンナーレについての感想を聞いてみた。「名古屋駅に着いてもそんな大きなイベントが行われている雰囲気はどこにもない。あのベロタクシーは乗る人が少ないらしく、入場券を見せなくても乗れた。長者街の古い建物に入れたことは感動だった。私の周辺では(娘は東京在住)美術の話題が結構出るが、名古屋ではまず出なかったから盛り上がらないのは当然かもね」だった。
 
 このあいちトリエンナーレに連動して10月9日から「文化のみち堀美術館」で『針生一郎が選んだ愛知60年代の現代美術展』が開かれる。これは世界的な評論家の針生さんと僕の話し合いから生まれた美術展だ。会場やポスター等は友人の堀財団会長の世話になっている。前衛芸術が花開いた60年代は現代美術の頂点であり、ここにすべてが集約されていると言われている。『針生一郎が選んだ愛知60年代の現代美術展』を見て当時の美術がいかに進んでいたかを見、現代のトリエンナーレと見比べてみるのも面白いのではないかと思う。近ごろは「あなたのやる現代美術展の方が意義があるかもしれないね」とたくさんの人に言われるようになった。時間があったら是非一度足を運んで頂けたらと思う。
 
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プロフィール

絵描きの山彊

Author:絵描きの山彊
山田彊一プロフィール
1964「ニューヨーク,日本人アーティスト14人展(最年少で選抜される。脇田和氏らと) 
1967 第6回シェル美術展(佳作賞)
1981 第3回中日美術展(大賞)
1982 第4回エンバ美術賞展(優秀賞)
1983 第5回宇部絵画トリエンナーレ展(優秀賞)
1984 第5回大阪現代版画コンクール展(優秀賞)
1985 第1回和歌山版画ビエンナーレ展(大賞)
1986 第2回IBM絵画コンクール(大賞)
1989 第11回エンバ美術賞展(準大賞)
1995 第1回中国・北京現代展(優秀賞)
1997 第8回大阪トリエンナーレ展(特別賞)
<著書>
『そして地獄・そして芸術』(ギャラリー安里)
『中学が爆発する』(風媒社)
『きしめん紳士が行く』(風媒社)
『ナゴ・ナラ』(アドア出版)
『おもしろ老後生活術』(黎明書房)
『ピカソはやっぱり名古屋人』(アドア出版)
『僕らにできる教育革命』(アドア出版)
『名古屋力 アート編』(ワイズ出版)  
『名古屋力 妖怪篇』(ワイズ出版) 
『妖怪インニューヨーク』(ワイズ出版)等                   

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